もんでも取れない手のしびれ

手のしびれが気になって、肩や腕をもんでみる。その場は少し楽になった気がするけれど、しばらくするとまた戻ってくる。

そんな経験はないでしょうか。

肩こりなら、もめばそれなりに軽くなります。ところがしびれは、もんでも押しても変わらないことが多い。そこに戸惑って、「どうすればいいのか分からない」まま何か月も過ごしてしまう方は少なくありません。

もうひとつ、多くの方が見落としていることがあります。手がしびれているのに、原因が手にあるとは限らないということです。

「手がしびれる」と相談に来られる方の話を聞いていると、首が関係しているとは思ってもみなかったという反応をよく見かけます。しびれている場所と、原因の場所が離れているからです。

この記事では、手のしびれがどこで起きているのかを、しびれる指の場所から見分ける方法としてお伝えします。

しびれは「こり」とは別のものです

まず、押さえておきたい違いがあります。

しびれは、神経そのものや神経の通り道に問題が起きていることが多い症状です。

筋肉が緊張した状態が続くと、血流が低下したり疲労物質がたまりやすくなり、こりとして感じます。こちらはもめばゆるみ、その場で軽くなることが多いです。

一方のしびれは、神経がどこかで圧迫されたり引っ張られたりして起きていることが多く、その場所を変えない限り表面をもんでも変わりにくいのが実際のところです。なお、筋肉の強い緊張が神経を圧迫しているケースもあり、両者はきれいに分かれるものではありません。

だからこそ、しびれに対して「とりあえずマッサージ」を続けても手応えがないのです。やるべきことは、どこで神経が締めつけられているのかを絞り込むこと。

そして、その手がかりが「しびれる指の場所」にあります。

手がしびれる3つの原因

① 首(頸椎)で神経が圧迫されている

腕と手に向かう神経は、すべて首から出発します。首の骨や椎間板の変化、まわりの筋肉の緊張によって、出口の部分で神経が圧迫されることがあります。

デスクワークで頭が前に出た姿勢が続くと、首の後ろには常に負担がかかります。いわゆるストレートネックと呼ばれる状態です。頭は体の中でも重い部位で、前に傾くほど首が支える力は増していきます。

ただし、姿勢だけが原因とは限りません。長期間にわたって首への負担が続くと、首から出る神経が通る部分が狭くなり、しびれにつながることがあります。椎間板の変化や骨のとげ、神経の出口が狭くなるなど、背景は人によってさまざまです。

首が関係している場合、首を動かすとしびれが変化することが多く、原因を考える手がかりになります。上を向いたとき、横に倒したときに強くなるかどうかを見てみてください。ただし変化しない方もいるため、それだけで否定はできません。

首まわりの負担については首の痛みが治らない本当の原因でも扱っています。

② 鎖骨まわりで神経と血管が通りにくくなっている

首から出た神経は、鎖骨と肋骨のすきまを通って腕へ向かいます。この通り道が狭くなって症状が出るものを、胸郭出口症候群と呼びます(※1)。

猫背や巻き肩でこの通路が狭くなるほか、なで肩の方や、腕を上げる動作が多い方にも起こりやすいとされています。

腕全体が重だるい、上に上げるとしびれるといった出方をするのが特徴です。神経だけでなく血管も一緒に通っているため、手の色が変わることもあります。

③ 手首や肘で神経が締めつけられている

首よりも手前、手首や肘のトンネル部分で神経が圧迫されることもあります。

手首なら手根管症候群、肘なら肘部管症候群と呼ばれます。手をよく使う仕事、肘を曲げた姿勢が長い方に起こりやすい傾向があります。

手首まわりの負担は手首が痛いあなたへでも触れています。

しびれる指の場所で見分ける

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

神経は指ごとに担当が分かれています。だから、どの指がしびれるかで、どこで締めつけられているかの見当がつきます。

しびれる場所関係する神経疑われるところ
親指・人差し指・中指と、薬指の親指側正中神経手首(手根管症候群)
小指と、薬指の小指側尺骨神経(肘部管症候群)
腕全体・手全体が重だるい腕神経叢首や鎖骨まわり

⚠️ 首が原因の場合は、この表のように指だけで分かれるとは限りません。手首や肘での圧迫(末梢神経の問題)と、首から出る神経の圧迫とでは、しびれの広がり方の決まり方がそもそも違うためです。

日本整形外科学会の解説でも、手根管症候群は「最終的には親指から薬指の親指側の3本半の指がしびれる」、肘部管症候群は「肘の内側を軽くたたくと小指と薬指の一部にしびれ感がはしる」と説明されています(※2・※3)。

首が原因のときは、出方が少し違います

ややこしいのですが、首の骨のあいだから出る神経が圧迫された場合は、上の表とは別の分布になります。

首から出る神経は、高さごとに担当する範囲が決まっています。そのため首が原因のときは、指先だけでなく肩から腕、前腕を通って指へと、帯のように細長くしびれることが多くなります。「手だけ」ではなく「腕の外側のライン全体」「親指側のライン」といった感じ方になるのが特徴です。

見分けの手がかりは、首を動かしたときに変化するかどうか。上を向く、しびれる側に首を倒すといった動きで強くなるなら、首が関わっている可能性が高くなります。

小指だけがしびれるのに首をいくらケアしても変わらない、という状況はここから説明がつきます。原因が肘にあるなら、首をほぐしても神経の通り道は変わらないからです。

自分で確かめるときのコツ

  • どの指か、指を1本ずつ触って確かめる(「手全体」で片づけない)
  • 首を上に向ける・横に倒すと変化するか
  • 腕を上に上げると変化するか
  • 肘を深く曲げたままにすると強くなるか
  • 朝方に強いか(手根管症候群は明け方に強いとされています※2)

しびれる場所と、変化する動きの2つをメモしておくと、受診したときの説明がぐっと楽になります。

⚠️ ただし自己判断はしないでください

指の場所はあくまで見当をつけるための手がかりです。実際には複数の場所が同時に関わっていることもありますし、首と手首の両方で圧迫が起きている場合もあります。実際には、医師の診察や必要に応じた画像検査・神経の検査などで確認します。

今日からできる3つのアクション

① 画面の高さを上げる

首が原因のしびれで、いちばん効くのがこれです。

ノートパソコンをそのまま机に置くと、視線は必ず下を向きます。画面の上端が目の高さにくるように台や本で持ち上げるだけで、頭が前に出る量が減ります。

姿勢そのものの整え方は意識しても姿勢が改善しない本当の理由にまとめています。

② 肘を曲げっぱなしにしない

肘を深く曲げた状態が続くと、内側を通る神経が引き伸ばされます。スマホを持つ手、頬杖、腕を組む姿勢、寝るときに肘を曲げて抱え込む姿勢が代表的です。

とくに寝ているあいだの姿勢は無自覚です。朝に小指側のしびれが強い方は、寝る姿勢を見直してみてください。

③ 30分に1回、胸を開く

猫背で固まると、鎖骨まわりの通り道が狭くなります。

椅子に座ったまま、両手を後ろで軽く組んで、胸を前に開いて10秒。肩をすくめず、あごを引いたまま行うのがコツです。息は止めずに、ゆっくり呼吸を続けてください。

痛みやしびれが強くなる場合は、そこで止めてください。

あわせて、鎖骨まわりの通り道を狭くしない日常の工夫も効きます。

  • 長時間、肩をすくめた姿勢を続けない(寒い場所や緊張時に無意識でそうなりがちです)
  • 重いバッグを毎回同じ肩で持たない。リュックや手持ちに替える、左右を入れ替える
  • 腕を上げ続ける作業を区切る(高い棚の整理、洗濯物を干す、髪を乾かすなど)

まとめ

  • しびれは、神経そのものや神経の通り道に問題が起きていることが多い症状。もんでも変わりにくいのはそのためです
  • 手がしびれていても、原因は手にあるとは限りません。首・鎖骨まわり・肘・手首のどこかで神経が締めつけられています
  • どの指がしびれるかが、原因を絞り込む手がかりになります

整形外科の現場で意外に感じるのは、「手のしびれ=手が悪い」と思って来られる方が多いことです。実際には首や鎖骨まわりが関わっていることも珍しくありません。

しびれている場所と、原因の場所は必ずしも一致しません。だからこそ、もむのではなく「どこで締めつけられているか」を絞り込むことが、遠回りに見えていちばんの近道になります。

まずは今日、しびれている指を1本ずつ確かめるところから始めてみてください。

セルフチェック

当てはまる項目が多いほど、神経の通り道が狭くなっている可能性があります。

  • 肩や腕をもんでも、しびれは変わらない
  • 首を上に向ける・横に倒すとしびれ方が変わる
  • 腕を上げた姿勢を続けるとしびれてくる
  • 朝方や明け方にしびれが強い
  • パソコン作業のあと、手に違和感が残る

やりがちなNG

  • しびれている場所を強くもむ(神経の問題なので変わりにくく、刺激が強すぎることもあります)
  • 「手全体がしびれる」で片づける(指ごとに確かめると手がかりになります)
  • 首だけをケアして終わりにする(肘や手首が原因のこともあります)
  • しびれたまま長時間のパソコン作業を続ける
  • 力が入りにくいのに様子を見てしまう

受診の目安

以下に当てはまる場合は、自己判断で様子を見ずに医療機関へご相談ください。

  • 手に力が入りにくい、物を落とすことが増えた
  • 親指の付け根や手の甲の筋肉がやせてきた
  • 両手が同時にしびれる、足にもしびれがある、歩きづらさや足のもつれ、排尿・排便の異常をともなう
  • 安静にしていてもしびれが強く、夜間に目が覚める
  • 転倒や強い衝撃のあとからしびれが出ている

よくある質問

Q1. しびれはどのくらいで良くなりますか?

原因と程度によって大きく異なります。姿勢や使い方が背景にある場合は、環境を変えて数週間で軽くなる方もいます。一方で神経の圧迫が強い場合は時間がかかることもあり、個人差が大きい部分です。

Q2. マッサージや整体には行かないほうがいいですか?

行ってはいけないということではありません。ただししびれの原因が神経の圧迫にある場合、もむだけでは変わりにくいのが実際のところです。力が入りにくいなどの症状がある場合は、まず医療機関で原因を確認してからにしてください。

Q3. しびれる指が日によって変わります

複数の場所で圧迫が起きている場合や、姿勢によって圧迫の程度が変わる場合があります。いつ・どの指が・どんな姿勢で強くなるかをメモしておくと、受診時に伝えやすくなります。

Q4. 温めたほうがいいですか、冷やしたほうがいいですか?

一般的には、筋肉の緊張がある場合は温めると楽に感じる方が多いです。ただししびれの原因によって適否が変わるため、どちらかで悪化するようなら中止して、医療機関でご相談ください。

Q5. 首のストレッチをしても大丈夫ですか?

痛みやしびれが強くならない範囲であれば問題ないことが多いです。ただし首を勢いよく回す、反動をつけて倒すといった動きは避けてください。ゆっくり動かして、しびれが強くなる方向には無理に動かさないことが大切です。

出典・参考文献

※1 日本整形外科学会「胸郭出口症候群

※2 日本整形外科学会「手根管症候群

※3 日本整形外科学会「肘部管症候群

✍️ この記事の執筆者

ふみや|柔道整復師

整形外科クリニックのリハビリ室での臨床経験あり。30代以降の体の不調と向き合ってきた立場から、痛み・こり・姿勢・運動のセルフケアを「やさしく、でも本質を外さず」をモットーに発信しています。

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