片足立ち、思ったよりグラグラしませんでしたか
テレビで「片足立ちが何秒できるか」を見て、その場で試してみた。そうしたら、思っていたよりずっとグラグラして驚いた——そんな経験はありませんか。
片足立ちがグラつくと、多くの方は「歳のせいかな」「運動不足だな」と受け取ります。そして次に考えるのが、「毎日やって秒数を伸ばそう」です。
ですが、ここで一つ回り道をおすすめしたいのです。
グラつきは「弱さ」のあらわれというより、どこに課題があるかを考えるヒントです。
同じ「30秒しか立てない」でも、足元がフラフラしている方と、骨盤や上半身が傾いてしまう方では、見るところが変わってきます。
なお、先にお伝えしておきたいことがあります。片足立ちをすると膝・足首・股関節・腰などに痛みが出る場合は、「バランスが悪いから」と考えて無理に練習する必要はありません。 その痛みが何から来ているのかを確かめるほうが先です。
グラつく原因は「バランス感覚」だけではない
片足立ちは、片方の脚だけで体を支える動きです。このとき体は、主に次の3つを組み合わせて姿勢を保っています。
- 足元:足裏からの情報を使いながら、足首を中心に細かく姿勢を調整する
- 股関節・骨盤まわり:骨盤や上半身が大きく傾かないように支える
- 感覚:目からの情報、耳の奥にある平衡感覚、関節や筋肉からの感覚をもとに、体がどこにあり、どちらに傾いているかを感じ取る
このどれかが働きにくくなると、残りが補おうとすることがあります。ただし、どれか1つだけが理由とは限りません。筋力、関節の動く範囲、痛み、その日の疲れや体調など、いくつもの要素が重なります。
だからこそ、「バランス感覚が悪いから」と一括りにすると、対策の方向を間違えやすくなります。
整形外科クリニックの現場でよく見かけたのは、片足立ちが苦手だとおっしゃる方が、足の指を強く曲げて床をつかんでいるという姿でした。ご本人は無意識です。これは足元でなんとか安定させようとしている状態で、悪い動きというより、体がグラつきを補おうとしている反応の一つと考えられます。
片足立ちは、バランスを鍛える運動である前に、体の使い方を観察する鏡です。
なお、片足立ちは日本整形外科学会が「ロコトレ」として紹介している2つの運動のうちの1つでもあります(もう1つはスクワット)(※1)。それだけ、足腰の状態があらわれやすい動きだといえます。
片足立ちでやりがちな3つの間違い
① 足の指で床を強く握り込んでいる
いちばん多いのがこれです。指を強く曲げて床を握ると、その瞬間は止まって見えます。ですが、指の力に頼っている間は、そのほかの部分が姿勢を調整する場面が少なくなりやすい面があります。
目安として、指をギュッと握り込まずに立てるかを確かめてみてください。握り込まないと崩れてしまうなら、足元だけで耐えている状態かもしれません。
なお、指を浮かせる必要はありません。浮かせると足裏の接地が変わってしまいます。あくまで「握り込まない」だけで十分です。
② 上げているほうの脚に意識が向いている
「もっと高く上げなきゃ」と考えてしまう方は多いのですが、片足立ちで主に働いているのは支えている側です。上げた脚を高くしても、支える側の働きがそのぶん増えるとは限りません。
見るべきは、支えている側の骨盤です。上げた脚のほうへ骨盤が「ストン」と落ちていないか。大きく崩れているなら、骨盤を支える働きが十分に出ていないことがあります。ただし骨盤の高さは体格や服装でも見え方が変わるため、これだけで決めつけないでください。この感覚はヒップリフトが効かないあなたへでお伝えした「お尻が働かない」状態と重なります。
③ 何もつかまらずにやろうとしている
「つかまったら意味がない」と思っていませんか。そんなことはありません。
学会の案内にも、「転倒しないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう」「支えが必要な人は十分注意して、机に手や指をついて行います」と明記されています(※1)。
机に指を1本添えるだけでも、体は支える練習をしています。転んでしまえば元も子もありません。
支えている側を働かせる立ち方
① 足裏を自然に床につける
まず、机や壁のそばに立ちます。片脚を床から少し浮かせるだけで十分です。高く上げる必要はありません。
このとき、足の裏の一部分だけに体重を集めず、かかとから足指の付け根まで自然に床を感じるようにしてみてください。とくに、つま先側だけに体重が乗ってかかとが浮いてしまわないことがポイントです。指は握り込まないままにします。
息は止めず、自然な呼吸を続けてください。めまいやふらつきが強い日、痛みが出ている日は、無理に行わないでください。
② 骨盤を大きく崩さない
支えている側の骨盤が大きく落ち込まないように、腰骨の高さが左右で極端にずれていないかを見ます。鏡があれば正面から確かめてみてください。
多少の左右差が出ること自体は珍しくありません。ぴったり水平にすることが目的ではなく、大きく崩れていないかを見るのが目的です。
うまく働いていると、お尻の横あたりに軽く張る感じが出る方が多いです。ただし、太ももの外側や足首のまわりで感じる方もいますし、何も感じなくても間違いとは限りません。感覚がつかめないときは、鏡で骨盤の高さを目で確かめるほうが確実です。
③ ゆっくり戻すところまでを1回とする
見落とされがちなのが、終わり方です。浮かせた足をドスンと落とすと、そこで姿勢が崩れてしまいます。
上げる → 保つ → ゆっくり戻す。 ここまでを一続きの動作として、1回と考えてみてください。最後まで姿勢を崩さずに足を戻すだけで、同じ回数でも中身が変わってきます。
時間の目安
学会のロコトレでは、左右とも1分間で1セット、1日3セットが紹介されています(※1)。
ただし、いきなり1分立てなくても構いません。10秒でグラつくなら、その10秒を丁寧にやるほうが先です。秒数は結果であって、目標ではありません。
なお、この1分は運動メニューとしての目安であって、「◯秒立てれば転ばない」「◯秒立てないと危ない」といった安全の保証や判定の基準ではありません。立てた秒数だけで、自分の状態を決めつけないでください。
続けるための3つの習慣
① 何かの「ついで」に組み込む
片足立ちは、道具も場所もいりません。だからこそ、単独でやろうとすると忘れます。
- 歯を磨いている間
- 電子レンジを待っている間
- 洗面台で顔を洗ったあと
流し台や洗面台の前は、つかまるものがあるという意味でも都合がいい場所です。
② 左右差に気づいたら、まず理由を考える
多くの方に、立ちやすい側と立ちにくい側があります。左右差があること自体は、珍しくありません。
気をつけたいのは、差に気づいたときに、すぐ「苦手な側を鍛えよう」と考えないことです。左右差の背景には、利き足の違い、過去のけが、痛み、関節の動く範囲、しびれなど、いろいろな理由があります。
痛みや過去のけがに心当たりがある場合は、無理に苦手な側だけ回数を増やす必要はありません。 心当たりがなければ、左右とも同じように続けて構いません。
過去に足首をひねったことがある方は、その側が苦手なことがあります。心当たりがあれば足関節捻挫の後遺症もあわせてご覧ください。
③ 日常の場面で変化を確かめる
秒数を測るより、生活の中の変化に気づくほうが続きます。人によっては、次のような場面で違いを感じることがあります。
- 靴下や靴を立ったまま履けるようになった
- 階段を降りるときに膝がぶれにくくなった
- 段差でつまずきかけたとき、立て直せた
こうした変化のほうが、数字より励みになります。膝のぐらつきが気になる方は階段を降りると膝が痛い本当の原因も参考になるかもしれません。
まとめ
片足立ちがグラつくとき、押さえたいのは次の3点です。
- 足の指で握り込まない——指の力に頼らず、足裏を自然に床につける
- 支えている側を見る——上げた脚ではなく、骨盤が大きく崩れていないかを確認する
- つかまってよい——学会も、つかまるものがある場所で行うよう案内している
大切なのは秒数を伸ばすことではなく、グラつき方を観察することです。 どこで崩れているかが見えてくれば、やることは自然に絞られていきます。
今日は10秒でも構いません。指を握り込まず、かかとが浮かないまま立てたなら、それは昨日より確かな10秒です。
セルフチェック
- 片足立ちをすると、足の指が強く曲がって床をつかんでいる
- 立ちやすい側と立ちにくい側で、はっきり差がある
- 支えている側の骨盤が、上げた脚のほうへ大きく落ちる
- 靴下を立ったまま履くのが、以前より難しくなった
- 段差でつまずきかけたとき、立て直しづらくなった
当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、そのまま見直しやすい場所です。支えている側を働かせる立ち方を見て、1つだけ試してみてください。
やりがちなNG
- つかまらずに行い、ふらついて転びそうになる
- 上げるほうの脚を高くすることに集中してしまう
- 秒数を伸ばそうとして、息を止めて踏ん張る
- 左右差に気づいて、理由を確かめないまま苦手な側だけ回数を増やす
- 痛みが出ているのに、我慢して回数を重ねる
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で続ける前に医療機関へ相談してください。
- 急にバランスが取りにくくなった、日ごとに悪くなっている
- めまいやふらつきに加えて、物が二重に見える・ろれつが回らない・手足が動かしにくい
- 片側だけ極端に立てない、または立とうとすると強い痛みが出る
- 足のしびれや、力の入りにくさがある
- 何もしていないのに、たびたび転ぶ
とくに2つ目——めまいに加えて、見え方・話し方・手足の動きに変化がある場合は、様子を見ないでください。突然このような症状が出たときは、救急の受診も検討してください。
よくある質問
Q1. 何秒立てれば合格ですか?
「何秒できれば安心」という線引きは、簡単には引けません。 学会のロコトレでは左右1分間が目安として紹介されていますが(※1)、これは運動メニューとしての目安であって、安全を保証する基準ではありません。秒数より、グラつき方が変わってきたかを見るほうが役に立ちます。
Q2. つかまってやっても意味がありますか?
あります。学会の案内でも、つかまるものがある場所で行うよう明記されています(※1)。机に指を添えていても、支えている側の脚とお尻は働いています。まずは安全に続けられる形から始めてください。
Q3. 目を閉じてやったほうが効果的ですか?
この記事で紹介している範囲では、目を閉じて行わないでください。 目を閉じると体の傾きを感じ取る手がかりが減り、転倒の危険が高まります。
そして、難しくなる=効果が高い、ではありません。 目を開けたまま安定して立てるようになってから、必要に応じて考える順番が向いています。
Q4. 左右で差があるのは問題ですか?
多少の左右差は珍しくありません。 利き足や過去のけがの影響で差が出ることもあります。
ただし、差に気づいたらまず理由を考えてみてください。痛みがある、過去に大きなけがをした、しびれがあるといった場合は、苦手な側だけ回数を増やすより、一度確認してもらうほうが先です。片側だけ極端にできない場合や、日ごとに差が広がる場合も同じです。
Q5. 毎日やらないと意味がないですか?
毎日できるに越したことはありませんが、続かない量を設定するほうが遠回りです。歯磨きのついでに10秒ずつ、から始めても構いません。股関節そのものが硬くて動かしにくい方は、股関節が硬い本当の原因と柔らかくする3方向ケアを先に読んでみてください。