座っているうちに、尾てい骨が痛くなってきませんか
尾てい骨が痛い。座り始めは平気なのに、しばらくするとお尻の下のほうがじんじんしてくる。立ち上がろうとした瞬間に、ズキッとくる。
尾てい骨は、背骨のいちばん下、お尻の割れ目の上あたりにある小さな骨です(正式には尾骨といいます)。
整形外科クリニックの現場で、尾てい骨が痛いという方に聞くきっかけは、大きく2つです。
- 尻もちをついた
- 長い時間座っている
痛む場面としてよく聞くのは、「座っていると、だんだん痛くなってくる」「立ち上がる瞬間が痛い」という声です。
そして座っている姿を見せてもらうと、お尻が座面の前のほうにずれて、浅く腰掛けている方をよく見かけます。
座るたびに痛いと、クッションを探したり、座る姿勢をあれこれ工夫したりしたくなります。
その前に確かめたいのが、「座面のどこに座っているか」です。
クッションより先に、座る深さを見直す
お尻が前にずれて浅く腰掛け、そのまま背もたれに寄りかかると、骨盤は後ろに倒れます(骨盤の後傾)。
座っているとき、体重は主に、お尻の下にある左右の骨の出っ張り(座骨)で受け止めています。骨盤が後ろに倒れた状態では、座骨だけでなく、尾てい骨のまわりにも圧がかかりやすくなります。
「座っていると、だんだん痛くなる」という方は、この姿勢のまま長く座っていることがあります。
尾てい骨が痛いと、ドーナツ型などのクッションを思い浮かべる方も多いと思います。クッションで楽になる方もいます。
ただ、現場ではクッションをすすめる前に、まず椅子に深く腰掛けるところからお伝えしています。お尻が前にずれたままでは、クッションを敷いても、座り方そのものは変わらないからです。
クッションを足す前に、まずお尻の位置を決める。この順番で考えます。
⚠️ 尾てい骨の痛みには、座り方以外にもさまざまな背景があります。尻もちなどのけが、出産の前後、まれに骨や皮膚、神経の病気が関わることもあります。この記事で扱うのは、その中でも座り方で尾てい骨への負担が増えているケースです。
⚠️ とくに尻もちのあとから痛む方、痛みが強くて立ち上がれない方は、座り方を見直すより先に受診の目安をご覧ください。尾てい骨の骨折や、仙骨・腰の骨など周りの骨のけがが隠れていることがあります。
尾てい骨が痛いときに見直したい3つのこと
① お尻が前にずれて、浅く腰掛けている
座り始めは奥まで座っていても、パソコンやスマートフォンに集中しているうちに、お尻が少しずつ前へずれていくことがあります。
背もたれと骨盤の後ろ(腰のいちばん下)のあいだに、すき間ができていないか確かめてみてください。
ソファのように座面が柔らかく奥行きのある場所では、この座り方になりやすいことがあります。
また、骨盤が後ろに倒れた座り方の方には、太もも裏(ハムストリングス)が硬い方も見かけます。太もも裏の柔軟性が低いことが、骨盤が後ろに倒れすぎない姿勢をとりにくくする一因になる場合もあります。
② 同じ姿勢のまま、長く座り続けている
深く腰掛けていても、同じ姿勢で長く座れば、尾てい骨のまわりには負担がかかりやすくなります。
デスクワーク、テレビ、車の運転。座っている時間が長い日ほど、痛みが出やすいと感じる方もいます。長く運転する方は、長時間運転で腰が痛い|運転中より「降りた直後」に注意もあわせてご覧ください。
座り方と座る時間は、セットで考えます。
③ 背もたれから、勢いで立ち上がっている
「立ち上がる瞬間が痛い」という声も、よく聞きます。
浅く腰掛けて骨盤が後ろに倒れたまま、背もたれから勢いで体を起こして立とうとすると、尾てい骨のまわりに圧がかかった姿勢のまま動き出しやすくなります。
立ち上がる瞬間だけ痛む方は、立つ直前の姿勢に目を向けてみてください。
今日からできる、座り方と立ち方の見直し
① 椅子に深く腰掛け直す
- お尻を座面のいちばん奥、背もたれに当たるところまで入れます
- 骨盤の後ろを背もたれに当てます。上体を後ろに倒して寄りかかるのではなく、骨盤を「当てる」感覚です
- 足の裏を床につけます
背もたれは、寄りかかるためだけのものではありません。骨盤の後ろを当てておくと、骨盤が後ろに倒れるのを支えやすくなります。
座っている途中でお尻がずれてきたと気づいたら、座面や机に手をついて一度お尻を浮かせ、奥へ座り直します。
⚠️ 足の裏が床につかない、座面の前の縁が膝の裏に強く当たる場合は、椅子が体に合っていないことがあります。足元に台を置くなどして、足の裏が床につき、膝の裏が圧迫されない状態を作ってください。
② 痛みが出る前に、一度立つ
「座っていると、だんだん痛くなる」方は、座り始めてから痛みが出るまでの時間を一度はかってみてください。
たとえば40分ほどで痛くなってくるなら、その少し前に一度立ちます。立ち上がって少し歩く、飲み物を取りに行く。それだけで構いません。
痛くなってから立つのではなく、痛くなる前に区切るのがポイントです。
③ 立つ前に、足を引いて体重を前に移す
- 座ったまま骨盤を軽く起こし、背中が丸まりすぎない姿勢にします
- 足を少し手前に引き、かかとまで足の裏全体を床につけます
- 上体を前に倒し、足の裏に体重を移します
- 足の裏に体重が乗ったら、立ち上がります
机や膝に手をついて構いません。背もたれから勢いで体を起こして立つより、尾てい骨のまわりに圧がかかったまま動き出すのを避けやすくなります。
座る姿勢をつかみやすくする2つの体操
① 座ったまま、骨盤を前後に動かす
骨盤が後ろに倒れすぎない位置を、体で覚えるための体操です。
- 背もたれに寄りかからずに座り、足の裏を床につけます。両手を腰骨に当てます
- ゆっくり骨盤を後ろに倒します。背中が丸まり、お尻の下の当たるところが後ろへ移ります
- 次に、ゆっくり骨盤を前に戻していきます。おへそを前に突き出すのではなく、お尻の後ろ側を少し立てるような感覚です
- 前後に小さく5回ほどくり返し、最後は腰が反りすぎず、背中も丸まりすぎない位置で止めて、そのまま深く座り直します
骨盤を後ろに倒すと、背中が丸まる
腰が反りすぎず、背中も丸まりすぎない位置へ
- 後ろに倒すときは、尾てい骨が座面に当たって痛みが強くなる手前で止めます
- 前に動かすときは、腰を反らしすぎないところまで。お腹を突き出すほど反る必要はありません(腰の反りすぎについては反り腰が腰の重さを生む理由でもお伝えしています)
回数を重ねることより、その位置で座る感覚をつかむことが目的です。
② 太もも裏をゆるめる
- 椅子に座り、片脚を前に伸ばして、かかとを床につけます。膝は少し曲がっていて構いません
- 背中を丸めずに、脚の付け根から上体を前に倒します
- 太もも裏が軽く伸びるところで止め、ゆっくり呼吸しながら20秒ほど保ちます
- ゆっくり上体を起こして戻ります。反対側も同じように行います
背中を丸めずに、脚の付け根から少し前へ
強く伸ばす必要はありません。痛みのない、軽く伸びる程度で十分です。しびれや電気が走るような感覚が出る場合は、中止してください。詳しいやり方は太もも裏が硬いと腰が痛くなる理由でもお伝えしています。
座ると尾てい骨の痛みが強くなってつらいときは、仰向けに寝て行う方法でも構いません。反対の膝は立てたまま、タオルを足の裏にかけて脚をゆっくり持ち上げます。こちらも膝は少し曲がっていて構いません。
体操は、深く座るための準備です。体操だけで終わらせず、そのあと深く座り直すところまでを1セットにしてください。
まとめ
尾てい骨が痛いときに見直したいのは、次の3点です。
- まずは深く腰掛け直す——クッションより先に、お尻の位置を決めます
- 痛みが出る前に立つ——痛みが出るまでの時間を、自分の目安にします
- 立つ前に、足を引いて体重を前に移す——背もたれから勢いで立ち上がらない
尾てい骨の痛みは、座り方だけでなく、座っている時間や立ち上がり方も関わっていることがあります。
うまくいっているかどうかは、座り始めてから痛みが出るまでの時間で見てください。前より長く座っていられるようになっていれば、続けてみる価値があります。変わらない、あるいは強くなっているなら、無理に続けず受診の目安を確認してください。
次に座るとき、お尻を背もたれまで入れる。そこから始めてみてください。
セルフチェック
- ①座っているうちに、尾てい骨のあたりが痛くなってくる
- ②立ち上がる瞬間に痛む
- ③気づくとお尻が前にずれて、背もたれとのあいだにすき間ができている
- ④前屈すると、太もも裏がすぐに突っ張る
- ⑤尻もちのあとから痛む
当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、先に見直す場所です。
- ①③ → 座り方と立ち方の見直しの①から。深く腰掛け直すだけで変わることがあります。痛みが出る時間が分かってきたら②へ
- ② → 同じく③へ。足を引いて体重を前に移してから立ってみてください
- ④ → 2つの体操の②へ。軽く伸びる程度で十分です
- ⑤ → 座り方の問題とは限りません。受診の目安を先にご覧ください
全部やろうとしなくて大丈夫です。1つ選べば十分です。
やりがちなNG
- お尻が前にずれたまま、背もたれに寄りかかって座り続ける
- 痛みが出てからも、同じ姿勢で座り続ける
- 背もたれから、勢いをつけて立ち上がる
- 痛いところを強く押したり、揉んだりする
- 尻もちのあと強く痛むのに、クッションだけ敷いて様子を見る
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で様子を見ずに医療機関へ相談してください。
- 尻もちのあと、痛みが強くて立ち上がれない、歩けない
- 尻もちのあと、腰や背中まで痛む、寝返りや起き上がりがつらい、痛みが日に日に強くなる
- 足のしびれや力の入りにくさがある、尿や便が出にくい・もれる、お尻まわりの感覚が鈍い
- 尾てい骨のあたりやお尻の割れ目が赤く腫れている、熱をもっている、しこりがある、膿や液体が出る、発熱を伴う
- じっとしていても痛む、夜も痛みで目が覚める
- 座り方を見直しても改善しない、または徐々に強くなっている
とくに1つ目——尻もちのあとに痛みが強くて立てない場合は、様子を見ないでください。尾てい骨の骨折や、仙骨・腰の骨など周りの骨のけがが隠れていることがあります。骨粗しょう症と言われたことがある方は、転ぶなどのちょっとしたはずみでも骨折しやすいとされています(※1)。早めに整形外科などの医療機関を受診してください。
よくある質問
Q1. ドーナツ型のクッションは使わないほうがいいですか?
使って楽になるなら、使って構いません。ただ、お尻が前にずれて浅く腰掛けたままでは、クッションを敷いても座り方は変わりません。まず深く腰掛け直し、そのうえで楽かどうかを確かめてください。
Q2. 痛いときは、なるべく座らないほうがいいですか?
座ることそのものを避けるより、座り方と座る時間を見直してください。痛みが強くならない範囲で普段どおり動けるなら、まったく座らないようにする必要はありません。深く腰掛け、痛みが出る前に一度立つ。まずはそこからです。ただし、尻もちのあとで痛みが強い場合は別です。受診の目安を確認してください。
Q3. 尻もちをついてからしばらくたつのに、まだ痛みます。
一度、整形外科などの医療機関で確かめてもらうことをおすすめします。痛みが長引いている原因が、座り方だけとは限りません。骨のけがが隠れていないかは、外から見ただけでは分かりません。座り方の見直しは、骨の状態を確かめてからでも遅くありません。