伸ばした直後は軽いのに、夕方には戻っている
首を横に倒して30秒。首のストレッチのやり方を調べると、たいていこう書いてあります。デスクの前でもできますし、道具も要りません。
伸ばした直後は、たしかに軽くなります。ところが夕方になると、また同じところが重い。翌朝にはすっかり元通り——そんな繰り返しになっていませんか。
そして「自分の首は特別かたいのかもしれない」と、伸ばす時間や強さを足していく方が多くいます。
ですが、つまずいている場所はたいてい同じところです。
「ストレッチ→一時的に楽→夕方またつらい」を繰り返しているなら、ストレッチが足りないのではなく、日中の負担がそのまま残っている可能性があります。
つまり、首だけを伸ばしていて、首に負担をかけている時間のほうを見ていない、ということです。
その場の軽さだけでは、判断しにくい
まず、判断の物差しを変えたいところがあります。
伸ばした直後に軽くなることはあります。ただ、その場で軽くなったことだけでは、その方法が自分に合っているかは判断しにくいものです。
つまり、こういうことです。
見るのは「伸ばした直後」だけではなく、その日の夕方や翌朝です。
そしてもう一つ。1日のうち、首のストレッチにかける時間は長くても数分です。一方で、首や肩に負担がかかる姿勢を続けている時間は、それよりずっと長くなります。
数分と数時間を比べれば、どちらを先に見直すかは決まってきます。
どこで感じるかには個人差があります。首の後ろで感じる方もいれば、肩の上や肩甲骨のあたりで感じる方もいます。「ここが伸びていないとおかしい」と考えなくて大丈夫です。
整形外科クリニックの現場でよく見かけるのは、首を触る前にデスクでの腕の置き方を聞くと、心当たりがあるという方です。ご本人は首の問題だと思って来られているので、腕の話が出ると意外そうな顔をされます。
首まわりの動きが気になる方は、肩甲骨はがしのやり方もあわせてご覧ください。
首のストレッチでやりがちな3つの間違い
① 首をぐるりと回している
いちばん多いのがこれです。「首を回すとゴリゴリ鳴って気持ちいい」という方は少なくありません。
ただ、首をぐるりと一周させる動きは、いろいろな方向が一度に混ざる動きになります。倒す・向くなど方向を分けて、痛みのない範囲でゆっくり行うほうが、どこを動かしているかがはっきりします。
音が鳴ること自体を目的にするのも、おすすめしません。鳴っても鳴らなくても、動いた範囲は変わりません。
② 伸ばす強さを足していく
効かないと感じたときに、手で頭を強く引っぱる方向へ進んでしまうことがあります。
首は無理に強く動かす必要のある場所ではありません。強く引っぱっても、伸びる量が増えるとは限りません。痛みが出るまで引くと、翌日に別のつらさが残ることもあります。
目安は、「痛気持ちいい」ではなく「じんわり伸びている」くらいです。息を止めずに続けられる強さなら十分です。
③ 首だけを伸ばしている
ここが本題です。
首を伸ばしても夕方に戻るなら、伸ばしていない時間のほうに理由があるかもしれません。
とくに見てほしいのが腕です。デスクに向かっているとき、肘がどこにも乗らず、宙に浮いていませんか。
腕にはそれなりの重さがあります。支える場所がないと、肩の上や首の付け根で支え続けることになります。1日数時間なら、その合計はかなりのものです。
姿勢そのものが気になる方は、姿勢改善の考え方もご覧ください。
伸ばす前に、腕の置き場所を変える
① まず、肘が乗っているかを見る
椅子に座った状態で、肘が机か肘掛けに乗っているかを確かめてください。
肘を軽く支えられる環境を作ると、腕の重さを肩や首だけで支えなくて済む場合があります。
高さの目安は3つです。肩がすくまない/肘が軽く曲がる/キーボードが遠すぎない。この3つが成り立つように、机・椅子・肘掛けのどれかを調整してみてください。
⚠️ ただし、肘を机に押しつけて肩がすくんでしまうなら、それは逆効果です。乗せることが目的ではなく、力を抜いて置けているかを見てください。
② キーボードとマウスを、体に近づける
腕を前に伸ばして操作していると、肘は自然と浮きます。
キーボードとマウスを、机の手前側に寄せてみてください。数センチ近づけるだけでも、腕を前に伸ばし続ける必要が減ります。
画面との距離も一緒に見直すと効果的です。目の疲れが強い方は、眼精疲労の原因もあわせてご覧ください。
③ そのうえで、ゆっくり倒して、ゆっくり戻す
環境を整えたうえで、ストレッチを足します。
椅子に座り、片手で座面の横をそっと持ちます。頭を反対側にゆっくり倒し、15〜20秒そのままにします。手で頭を引っぱる必要はありません。
見落とされがちなのが戻り方です。パッと起こすのではなく、倒したときと同じ速さでゆっくり戻します。ここまでを1回と考えてください。
左右で伸び方に差があっても構いません。そろえようとしなくて大丈夫です。
続けるための3つの習慣
① 長くやるより、こまめに挟む
まとめて5分やるより、こまめに短く挟むほうが続きます。
長時間同じ姿勢が続いたら、一度立って首や肩を軽く動かす——それくらいで十分です。トイレに立つ、飲み物を取りに行く、そのついでに1回だけ。回数を決めないほうが、かえって習慣になります。
② 夕方と翌朝をものさしにする
前にお伝えしたとおり、伸ばした直後の軽さは判断材料になりません。
見るのはその日の夕方と、翌朝起きた直後です。数日から1〜2週間続けて、そこが変わってきたかどうかで判断してください。変わらないなら、伸ばし方より環境を疑う番です。
③ しびれや力の入りにくさが出たらやめる
首を動かして、手や腕にしびれが出る、力が入りにくいと感じたら、その場でやめてください。
続けて様子を見るより、整形外科などの医療機関で一度確認してもらうほうが、その後の見通しが立ちます。首の後ろの張りが続く方は、ストレートネックの記事もご覧ください。
まとめ
首のストレッチで押さえたいのは、次の3点です。
- その場の軽さで判断しない——見るのは夕方と翌朝の状態
- 強さより、伸ばしていない時間を見る——肘が乗っているかどうか
- ゆっくり戻すまでが1回——倒したときと同じ速さで
首のストレッチは、かたさを力で押し返す作業ではありません。首に負担をかけている時間を減らしたうえで、動かす習慣を足していくものです。
今日は「肘が乗っているか」を一度見るだけで構いません。それだけでも十分な一歩です。
セルフチェック
- デスクに向かうとき、肘がどこにも乗っていない
- キーボードやマウスが、体から遠い位置にある
- 伸ばした直後は軽いが、夕方には戻っている
- 首を回すと音が鳴るので、つい回してしまう
- 手で頭を強く引っぱって伸ばしている
当てはまった項目が、そのまま先に変えられる場所です。伸ばす前に、腕の置き場所を変えるから、1つだけ試してみてください。すでに手や腕のしびれがある場合は、受診の目安を先にご覧ください。
やりがちなNG
- 効かないからと、伸ばす強さを足していく
- 首をぐるりと一周させて、音を鳴らす
- 伸ばした直後の軽さで「効いた」と判断する
- 手で頭を引っぱり、痛みが出るまで伸ばす
- 環境はそのままで、ストレッチだけを増やす
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で続ける前に医療機関へ相談してください。
- 手や腕のしびれ、力の入りにくさがある——とくに両手に出ている場合
- ボタンがかけにくい、箸が使いにくい、歩きにくいといった変化が出てきた
- 転んだ・ぶつけたあとから首が痛む
- 発熱を伴って首が痛み、動かせない
- 今までに経験のない強い痛みが、急に出た
とくに1つ目・2つ目——両手のしびれや、手先の細かい動作のしにくさ、歩きにくさが重なる場合は、様子を見ないでください。整形外科などの医療機関を受診してください。
よくある質問
Q1. どのくらい続ければ変わりますか?
期間には個人差があります。まず数日から1〜2週間、夕方と翌朝の状態を目安に見てください。日数で区切るより、「夕方のつらさや朝の重さが変わってきたか」で判断するほうが分かりやすいです。変化がなければ、伸ばし方ではなく環境のほうを疑ってみてください。
Q2. 何秒伸ばせばいいですか?
15〜20秒を目安にしてください。長く伸ばすほど良いというものではありません。息を止めずに続けられる強さで、こまめに挟むほうが習慣として続けやすくなります。
Q3. お風呂上がりのほうがいいですか?
体が温まっているほうが動かしやすい方は多いです。ただし、温めること自体がかたさに働きかけるという意味ではありません。やりやすいタイミングを選ぶ、くらいに考えてください。
Q4. 首を回すと鳴るのは、良くないことですか?
鳴ること自体で良し悪しは決まりません。ただ、鳴らすことを目的にすると、必要以上に動かしてしまうことがあります。音を追いかけず、動かす方向を分けてゆっくり行うほうが安心です。
Q5. 枕を変えたほうがいいですか?
合う高さには個人差があります。朝起きたときに首が重い日が続くなら、見直す価値はあります。ただし枕だけで解決すると考えないほうが無難です。日中の姿勢と合わせて見てください。寝違えを繰り返す方は、首の痛み・寝違えの記事もあわせてご覧ください。