伸ばしても、膝の裏の張りが抜けない

膝の裏が痛い。キッチンに立っているとき、電車で立っているとき、長く立ったあとに歩き出したとき——そんな場面で、膝の裏がじわっと張ったり、膝を伸ばすと突っ張るように痛んだりすることがあります。

そうなると、多くの方がまず膝の裏を伸ばそうとします。前屈をする。脚を前に伸ばして座り、膝を上から押さえる。壁に手をついてふくらはぎを伸ばす。

「伸ばすとその場は気持ちいい。でも、次の日にはまた張っている」

整形外科クリニックの現場で膝の裏の痛みについて伺うと、こうした話を耳にすることがあります。

膝の裏が痛いとき、膝の裏を伸ばしにいくのは少しだけ待ってください。

膝の裏は、硬いだけで痛むとは限りません

膝の裏が張ると、「太ももの裏が硬いからだ」「ふくらはぎが硬いからだ」と考えるのは自然なことです。硬さが関わっていることも、実際にあります。

ただ、もう1つ見てほしいことがあります。

1日のなかで、膝の裏に負担がかかっている時間がどれくらいあるかです。

ストレッチをするのは、長くても1日に数分です。一方で、立っている時間や座っている時間は何時間もあります。その何時間かのあいだ、同じ姿勢で膝の裏に負担がかかり続けていたら、数分のストレッチで追いつくのは難しくなります。

痛い場所は、硬さだけでなく、長時間同じ姿勢で負担がかかっていることもあります。

特に、膝を伸ばしきった状態で長く立つ習慣がある方は、一度立ち方を見直してみてください。

太ももの裏の硬さそのものについては、太もも裏が硬いと腰が痛くなる理由で詳しくお伝えしています。

⚠️ ただし、膝の裏の痛みには、膝の関節そのものの問題や腫れ、腱や筋肉の疲れ、血管の問題など、さまざまな背景があります。膝を伸ばしきって立つことが原因、というわけではありません。この記事で扱うのは、その中でも長時間の立ち方や座り方が症状に関わっているケースで、その一例として、膝をロックする立ち方を取り上げます。膝の裏にふくらみがある、膝が伸びきらない・曲がりきらないといった場合は、先に受診の目安をご覧ください。

膝の裏が痛いときに見直したい2つのクセ

① 膝をロックして立つ

立っているとき、膝を後ろへ押し込むようにして、ピンと伸ばしきって立っていませんか。関節で止めるようなこの立ち方を、ここでは「膝のロック」と呼びます。

キッチンで洗い物をしているとき、電車でつり革を持っているとき、レジに並んでいるとき。長く立つ場面ほど、この立ち方になりやすいようです。

膝を伸ばしきって関節に体重を預けるような立ち方は、楽に感じる方もいます。ただそのあいだ、膝の後ろ側の組織に負担がかかりやすくなります。

休めの姿勢で片脚に体重を預けるときも、体重をかけている側の膝がロックしやすくなります。片側に体重を預けること自体が悪いわけではありません。同じ姿勢を長く続けないことのほうが大切です。

前かがみのときに膝を伸ばしきってしまう話は、ヒップヒンジのやり方でも触れています。

② 痛い膝の裏を、さらに伸ばす

膝の裏が張ると、伸ばしたくなります。

伸ばした直後は楽になることがあります。ただ、痛みがあるうちに強く伸ばすと、痛みのある場所に刺激が加わり、症状が強くなることがあります。「その場は気持ちいいのに、翌日にまた張る」をくり返しているなら、伸ばし方より、伸ばすタイミングを見直すところかもしれません。

⚠️ ストレッチそのものが悪いわけではありません。痛みが落ち着いてから、痛みの出ない範囲で行うぶんには問題ありません。

あわせて、座ったときも確認してみてください。椅子の座面が深すぎたり、椅子が高すぎたりすると、座面の前の縁が膝の裏に強く当たることがあります。膝の裏の痛みの主な原因とまでは言えませんが、痛みがある方には気になりやすいところです。

今日から見直せる3つのこと

① 立つときは、膝のロックを外す

膝を曲げて立つのではありません。膝のロックを外すくらいの感覚です。ピンと伸ばしきっているところから、ほんの少しだけゆるめる。それだけです。

目安は、膝の裏を手で触ったときにピンと張っていないこと。見た目にはほとんど分からない程度で構いません。

⚠️ ゆるめたことで太ももの前が疲れる、膝のお皿のまわりが痛くなるといった場合は、曲げすぎていないか確認してください。「曲げる」ではなく「ロックしない」を意識してください。

② 痛いうちは、強く伸ばす代わりにまわりを動かす

代わりにできるのは、膝の裏を強く伸ばさずに、痛みのない範囲でまわりの関節を軽く動かすことです。

たとえば、椅子に座ったまま、かかとを床につけてつま先をゆっくり上げ下げする。足首がゆっくり動けば大丈夫です。膝を曲げた姿勢なので、膝の裏を強く伸ばすことなく足首を動かせます。

痛みが落ち着いてきたら、伸ばすストレッチに戻して構いません。そのときも、痛みの出ない範囲にとどめてください。

③ 座るときは、膝の裏が座面の縁に強く当たらないように

膝の裏が座面に軽く触れること自体は問題ありません。目指すのは、座面の縁が膝の裏に強く当たらず、圧迫感がない状態です。

深く腰かけたときに膝の裏が強く当たるなら、座面が深すぎる可能性があります。足の裏が床にしっかりつかず、膝の裏が座面に押しつけられているなら、椅子が高すぎる可能性があります。

座面が深い椅子なら、背中側にクッションを入れて座る位置を少し前にする。椅子が高いなら、足元に台を置く。こうした調整で、膝の裏への圧迫をやわらげられます。

立ち仕事や家事の日にできる工夫

長く立つ日は、膝をゆるめることを意識し続けるのも大変です。同じ姿勢を続けない工夫を足してみてください。

  • キッチンでは、片足を低い台に乗せる——膝を伸ばしきったまま立ち続ける時間を減らせます。台は、低い踏み台など身近にあるもので構いません。滑りにくいものを選んでください。ときどき左右を入れ替えます
  • 電車やレジ待ちでは、思い出したときに膝を確認する——ロックしていたら、ほんの少しゆるめます
  • 立ちっぱなしが続いたら、体重を左右に移す——片側に預けっぱなしにしない、それだけです

うまくいっているかどうかは、その日の夕方と翌朝の膝の裏で見てください。張りが前より軽くなっていれば、続けてみる価値があります。変わらない、あるいは強くなっているなら、無理に続けず受診の目安を確認してください。

膝の前や、階段で膝が痛む場合は、階段を降りると膝が痛い本当の原因もあわせてご覧ください。

まとめ

膝の裏が痛いときに見直したいのは、次の3点です。

  • 立つときは膝をロックしない——ほんの少しゆるめるだけで構いません
  • 痛いうちは膝の裏を強く伸ばしにいかない——痛みのない範囲でまわりを動かします
  • 同じ姿勢を長く続けない——座ったときの膝の裏の圧迫もあわせて確認します

膝の裏の痛みは、伸ばし足りないだけでなく、1日のなかで同じ姿勢が続く時間の長さが関わっていることもあります。伸ばす前に、まず立ち方から見直してみてください。

今日は、キッチンに立ったら膝を「ほんの少しゆるめる」。それだけでも十分な一歩です。

セルフチェック

  • ①立っているとき、膝を後ろへ押し込むようにして立っている
  • ②休めの姿勢で、いつも同じ脚に体重を預けている
  • ③膝の裏が痛いとき、前屈やストレッチで伸ばしている
  • ④椅子に座ると、座面の縁が膝の裏に当たる
  • ⑤膝の裏にふくらみや腫れがある、または膝が伸びきらない・曲がりきらない

当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、そのまま先に見直す場所です。

  • ①② → 今日から見直せる3つのことの①から。膝のロックを外すところから始めてください
  • ③ → 同じく②へ。痛みが落ち着くまでは、強く伸ばす代わりに足首などを軽く動かしてください
  • ④ → 同じく③へ。椅子の高さと座面の深さを確認してください
  • ⑤ → 立ち方の問題とは限りません。受診の目安を先にご覧ください

全部やろうとしなくて大丈夫です。1つ選べば十分です。

やりがちなNG

  • 膝の裏が痛いのに、前屈で膝の裏を強く伸ばす
  • 膝をロックして「ピン」と立ち続ける
  • 膝の裏を指で強く押してほぐそうとする
  • 腫れや熱っぽさがあるのに、もんだり温めたりして様子を見る
  • いつも同じ脚に体重を預けて立ち続ける

受診の目安

次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で様子を見ずに医療機関へ相談してください。

  • ふくらはぎまで腫れていて、赤みや熱っぽさ、押したときの痛みがある——とくに片脚だけの場合
  • 膝の裏にふくらみ(こぶのような腫れ)がある——関節液がたまってできるものなど、原因はいくつかあります
  • 膝が途中で引っかかったように、伸びない・曲がらない
  • 転んだ、ひねったなど、はっきりしたきっかけのあとから痛む
  • 足のしびれや、力の入りにくさがある
  • 立ち方や座り方を見直しても改善しない、または徐々に悪化している

とくに1つ目——片脚のふくらはぎの腫れ・赤み・熱っぽさがある場合は、様子を見ないでください。長く座っていたあとや、脚をあまり動かせない状態が続いたあとは、とくに注意が必要です。早めに医療機関を受診してください。息苦しさや胸の痛みを伴う場合は、すぐに救急に連絡してください。

よくある質問

Q1. 膝の裏のストレッチは、しないほうがいいのですか?

ストレッチそのものが悪いわけではありません。痛みがあるうちは控えめにして、落ち着いてから、痛みの出ない範囲で行ってください。伸ばした直後に楽になっても、翌日に張りが強くなるなら、まだ強く伸ばす時期ではないとお考えください。

Q2. 冷やすのと温めるのは、どちらがいいですか?

腫れや熱っぽさがある場合は、自己判断で温めたりもんだりせず、医療機関に相談してください。慢性的な張りで腫れや熱っぽさがなければ、入浴などで温めて楽になる方もいます。

Q3. 膝を曲げて立てばいいのですか?

曲げるのではなく、ロックを外すだけです。膝を曲げたまま立ち続けると、今度は太ももの前が疲れやすくなります。見た目にはほとんど分からない程度のゆるみで大丈夫です。

Q4. サポーターは使ったほうがいいですか?

膝の裏を強く圧迫しないものを選んでください。締め付けが強いものは、膝の裏に食い込んでかえってつらくなることがあります。つけて痛みやしびれが増えるなら、使用をやめてください。使う場合も、立ち方や座り方の見直しとあわせて考えてください。

✍️ この記事の執筆者

ふみや|柔道整復師

整形外科クリニックのリハビリ室での臨床経験あり。30代以降の体の不調と向き合ってきた立場から、痛み・こり・姿勢・運動のセルフケアを「やさしく、でも本質を外さず」をモットーに発信しています。

プロフィールを見る →