抱っこのたびに、腰が気になっていませんか

床から抱き上げる。ベビーベッドに寝かせる。チャイルドシートに乗せる。寝かしつけで、立ったまま揺れ続ける。

そのたびに腰が重い。抱き上げた瞬間に、ズキッとすることもある。

抱っこで腰が痛いと、「抱っこのしすぎかな」と思います。けれど、抱っこは休めません。泣いていれば抱き上げますし、移動のたびに抱えます。

整形外科クリニックの現場でも、子育て中の方や、お孫さんを抱く方から、腰の相談を受けることがあります。

休めないからこそ、抱く時間を減らす以外のところに、見直せる場所があります。

見直したいのは、抱いている時間だけではありません

抱っこの腰痛というと、抱いている時間の長さや、抱っこ紐の調整に目が向きます。どちらも腰の負担に関わります。

そのうえで、もう1つ見ておきたいのが、抱き上げる・下ろすときの動きです。

床、ベビーベッド、ベビーカー、チャイルドシート、お風呂。1日のうちに、かがんで持ち上げる場面は何度もあります。

このとき、子どもが体から離れたところにいるまま持ち上げると、腕を伸ばした先で重さを受けることになります。体から離れたところで持つほど、腰まわりの負担は大きくなりやすくなります。

抱き上げる前に、一歩近づく。

この記事でいちばんお伝えしたいのは、この一言です。

⚠️ ただし、抱き上げ方だけが原因、というわけではありません。寝不足や疲れ、産後の体の変化、もともとの腰の状態など、いくつもの要素が重なります。この記事で扱うのは、その中の「抱き上げる・下ろす動き」と「立って抱く姿勢」です。

急に強い痛みが出て動けない、脚にしびれがある——そうした場合は、先に受診の目安をご覧ください。

抱っこで腰が痛いときに重なりやすい3つのこと

① 子どもから離れたまま抱き上げている

立ったまま腰をかがめ、腕を伸ばして、床の子どもを抱き上げる。ベッドの柵ごしに、奥にいる子どもへ手を伸ばす。車の外から、チャイルドシートの子どもを引き上げる。

どれも、子どもが体から離れたままです。

物を持ち上げるときの考え方は、ヒップヒンジのやり方でもお伝えしました。重さのあるものは、体に引き寄せてから持ち上げます。

② 前かがみの姿勢が何度も続いている

1回ごとの重さは、それほどではありません。けれど、回数が重なります。

おむつ替え、着替え、お風呂。低い位置での世話が続くと、腕を伸ばしたまま前かがみでいる時間も長くなります。

抱っこの回数は減らせなくても、かがむ深さと時間は、工夫で変えられることがあります。

③ 同じ姿勢で抱っこを続けている

立って抱いていると、お腹を前に出して子どもを乗せたり、片側の腰に乗せたりする姿勢になりやすくなります。

その姿勢そのものが悪い、というわけではありません。片側に乗せることにも、楽に支えられるという理由があります。気をつけたいのは、同じ姿勢のまま長く続くことです。

腰が反った姿勢が気になる方は、反り腰が腰の重さを生む理由もあわせてご覧ください。

腰の負担を減らす、抱き上げ方と抱き方

① 抱き上げる前に、一歩近づく

  1. 子どものすぐそばまで、足を進める
  2. 膝や股関節も使って、体を下げる——片膝をついても構いません
  3. 先に、子どもを胸のほうへ引き寄せる
  4. 引き寄せてから、立ち上がる

腰を曲げてはいけない、ということではありません。離れたまま持ち上げないことがポイントです。

下ろすときも同じです。子どもを体に近づけたまま、自分も膝や股関節を使って高さを下げます。置く場所に近づいてから、最後に腕を伸ばします。

② かがむ深さと回数を減らす

家のつくりは、それぞれ違います。どの家でも目安になるのは、次の条件です。

子どもから離れた位置で腕を伸ばしたまま、腰を深く曲げて世話をする時間を短くする。

  • おむつ替えや着替えは、床に座って行うか、高さのある場所を使う
  • 抱き上げる前に、いったん自分が座る。座ったまま抱き寄せてから立つ
  • チャイルドシートへの乗せ降ろしは、できるだけ座席に近づき、腕を遠くまで伸ばさずに行う。無理のない範囲で、体の向きも調整する

⚠️ 高さのある場所を使うときは、子どもから手と目を離さないでください。転落のおそれがあります。

③ 立って抱くときは、姿勢をこまめに変える

  • 抱く側を、ときどき左右で替える
  • 壁にもたれる、座る
  • 抱っこ紐を使う時間と、腕で抱く時間を分ける

どれか1つの姿勢を「良い姿勢」として続けるのではなく、変えることを優先します。

抱っこを休めないときの工夫

座って抱く時間をつくる

寝かしつけや、ぐずったときの抱っこは、立ったままになりがちです。

座っても落ち着いてくれるときは、座って抱きます。背もたれに体を預けられると、腕と腰だけで支える時間を減らせます。

抱っこ紐は、合う位置を探す

抱っこ紐は、合えば、腕と腰で支える時間を減らす助けになります。

ベルトの位置や締め具合は、製品の説明に沿って合わせてください。つけていて腰の痛みが強くなるなら、位置を見直すか、続けて使う時間を短くします。

痛みが強い日は、抱き上げる役を分ける

痛みが強い日は、抱き上げる回数そのものを、家族と分けられないか考えてみてください。

抱っこをすべて代わってもらう必要はありません。床からの抱き上げだけ、お風呂だけ、といった分け方でも、かがんで持ち上げる回数は減ります。

まとめ

抱っこで腰が痛いときに見直したいのは、次の3点です。

  • 抱き上げる前に、一歩近づく——引き寄せてから立ち上がります
  • かがむ深さと回数を減らす——座る、高さを変える、近づく
  • 立って抱く姿勢を、こまめに変える——同じ姿勢を長く続けません

抱っこの時間は、すぐには減らせません。変えやすいのは、抱き上げる前の一歩です。

次に抱き上げるとき、まず足を一歩、子どものそばへ。今日はそれだけで十分です。

セルフチェック

まずは、普段の動きを振り返ってみましょう。

  • ①床やベッドの子どもを、腕を伸ばして抱き上げている
  • ②おむつ替えや着替えで、前かがみの姿勢が長く続いている
  • ③立って抱くとき、同じ側・同じ姿勢が長く続いている
  • ④抱き上げた瞬間や、下ろした瞬間に腰が痛む

当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、そのまま先に見直す場所です。

  • ①④ → 抱き上げ方と抱き方の①から。一歩近づいて、引き寄せてから立ちます
  • ② → 同じく②へ。離れたまま前かがみでいる時間を減らす工夫を、1つ選びます
  • ③ → 同じく③へ。抱く側や姿勢を、こまめに変えます

全部やろうとしなくて大丈夫です。1つ選べば十分です。

次の症状がある場合は、動きの見直しよりも受診を優先してください。

  • 脚にしびれがある、力が入りにくい

※ 新たな排尿・排便の異常や、股のまわりの感覚の異常がある場合は、すぐに救急の医療機関へ相談してください。くわしくは受診の目安をご覧ください。

やりがちなNG

  • 離れた位置から、腕を伸ばしたまま持ち上げる
  • 体を大きくひねったまま、腕を伸ばして抱き上げる・下ろす
  • 痛みをこらえて、同じ姿勢で抱き続ける
  • 急に強い痛みが出たのに、強くもんだり、無理に伸ばしたりする
  • しびれがあるのに、様子を見続ける

受診の目安

次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で様子を見ずに、整形外科などの医療機関へ相談してください。

  • 脚にしびれがある、力が入りにくい——新しく出た場合や、強くなっていく場合は早めに
  • 急に強い痛みが出て、動くのが難しい
  • じっとしていても痛む、夜も痛む、発熱を伴う
  • 転んだ、ぶつけたなど、きっかけのあとから痛む
  • 抱き方を見直しても改善しない、または徐々に悪化している

腰の痛みに加えて、新たな排尿・排便の異常(尿が出にくい、もれるなど)、股のまわりの感覚の異常、両脚のしびれや力の入りにくさが出た場合は、緊急性の高い病気の可能性があります。症状がそろうのを待たず、すぐに救急の医療機関へ相談してください。

急に強い痛みが出たときの過ごし方は、ぎっくり腰の対処法にまとめています。

よくある質問

Q1. 抱っこ紐を使えば、腰は楽になりますか?

合えば、助けになります。腕と腰で支える時間を減らせるためです。ただし、抱っこ紐を使っていても、抱き上げる・下ろす動きはなくなりません。つけていて腰の痛みが強くなる場合は、ベルトの位置を見直すか、続けて使う時間を短くしてください。

Q2. 腰のベルト(コルセット)は使ってもいいですか?

状態によっては、一時的に動作を助けることがあります。ただし、どの腰痛にも合うわけではありません。痛みが続く場合や、長く使いたい場合は、医療機関で相談してください。

Q3. 腹筋や背筋を鍛えたほうがいいですか?

痛みが強い時期に、無理に始める必要はありません。まずは抱き上げ方と、かがむ回数の見直しからで十分です。痛みが落ち着いてきたら、無理のない範囲で少しずつ体を動かしていきます。

Q4. 痛いときは、抱っこを休んだほうがいいですか?

痛みが強くならない範囲で普段どおり動けるなら、抱っこをすべてやめる必要はありません。座って抱く、抱き上げる役を家族と分ける、といった形で、かがんで持ち上げる回数を減らしてみてください。急に強い痛みが出た場合や、しびれがある場合は、受診の目安を確認してください。

✍️ この記事の執筆者

ふみや|柔道整復師

整形外科クリニックのリハビリ室での臨床経験あり。30代以降の体の不調と向き合ってきた立場から、痛み・こり・姿勢・運動のセルフケアを「やさしく、でも本質を外さず」をモットーに発信しています。

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