「秋だし走ろう」と思った次の日に
涼しくなってきたし、ジョギングを始めよう。そう思って、久しぶりに走ってみた。思ったより走れて、気持ちよかった。
ところが次の日、膝の内側がズキッとする。朝の一歩目で、かかとが痛い。
整形外科クリニックの現場で、走り始めて痛めた方からよく聞くのは、膝の内側とかかとの痛みです。
そして話を聞くと、共通していることがあります。
ふだん運動をしていない方が、1回目から張り切って走っている。
走れたのは、がんばれたからです。ただ、その「がんばれた」が、次の日の痛みにつながっていることがあります。
最初につまずくのは、体力より「張り切り方」
走り始めてしばらくすると、息が上がりにくくなってきたと感じる方もいます。
ただ、息が楽になっていくペースと、脚が慣れていくペースは同じとは限りません。膝やかかとまわりは、息が楽になったからといって、同じだけ負担に耐えられるようになっているとは限らないのです。
息はまだいける。気持ちもまだいける。だから、もう少し走る。こうして、脚のほうが先に限界を超えてしまうことがあります。
「まだ走れる」と思ったところが、やめどきです。
⚠️ 膝やかかとの痛みには、走り方以外にもさまざまな背景があります。もともと膝に痛みがある方、体重の急な増減があった方、以前にけがをしたことがある方などは、走り始める前に一度医療機関で相談しておくと安心です。
ジョギングを始めた人がやりがちな3つのこと
① 初日に、走れるところまで走る
よく見かけるのがこれです。
「せっかく始めたから」「今日は調子がいいから」と、行けるところまで行ってしまう。初日は気持ちが乗っているぶん、止まるきっかけがありません。
走り終わった直後は平気でも、痛みが出てくるのは翌日や翌々日ということもあります。その日の感覚だけで「大丈夫だった」と決めないようにしたいところです。
② 足を前に投げ出して、ブレーキをかけながら走る
足を体の前に大きく投げ出して、強くブレーキをかけるように着く走り方です。
この着き方だと、進もうとしているのに、一歩ごとにブレーキがかかるような走りになりやすくなります。そのぶん、着地の衝撃やブレーキの負担が大きくなり、膝や足まわりに負担を感じやすくなることがあります。
なお、走るときにかかとが先に接地すること自体が問題なのではありません。気をつけたいのは、足を前に大きく投げ出して、強くブレーキをかけるような着き方です。
歩くときと同じで、足を遠くに出そうとするほど、この着き方になりやすくなります。歩き方についてはウォーキングの歩き方|意識を足すほど疲れる理由でもお伝えしました。
③ 靴の中で足が動いたまま走る
かかと部分が柔らかすぎて、足を入れたときにかかとが靴の中で安定しない。ひもをゆるく結んだまま、脱ぎ履きしている。
こうした状態だと、走っているあいだ、足が靴の中で大きく動きやすくなります。一歩ごとに足が前後左右にずれると、かかとや足まわりに負担がかかることがあります。
⚠️ 普段の通勤で履いている楽な靴と、走るときの靴は、求められるものが違います。「履きやすい」と「走りやすい」は同じではありません。
痛めにくい走り始め方
① 歩きから始めて、「走る」と「歩く」を混ぜる
最初から走り続けなくて大丈夫です。
- まず数分、ふつうに歩いて体を温めます
- 少し走って、きつくなる前に歩きに戻します
- これをくり返し、最後はまた歩いて終わります
走る時間は「走れるところまで」ではなく、まだ余裕があるところで切り上げます。最初の何回かは、物足りないくらいで終えるのがちょうどいいです。
走り終わったら、いきなり止まらずに、歩いてから終える。息が落ち着くまで歩くのが、走る日の「戻り方」です。
② 足を前に投げ出さない
意識するなら、1つだけで十分です。
足を前に投げ出さない。
体の前に大きく足を伸ばすのではなく、自然な歩幅で走ってみてください。強くブレーキをかけるような着き方になりにくくなります。
⚠️ 「かかとで着かない」ことを意識して、つま先だけで着地しようとしなくて大丈夫です。急に着き方を変えると、ふくらはぎやかかとの後ろに負担が移ることがあります。着き方より、足がどこに着いているかを見てください。
③ 走る前に、靴ひもを結び直す
- 靴を履いたら、かかとを地面に軽くトントンと当てて、かかとを靴の後ろに合わせます
- つま先側から順に、ひものたるみを取ります
- 足首側の穴まで使って、靴の中で足が大きく前後左右に動かないように留めます
締めたあとに、足の甲がしびれる、指先の感覚が鈍いといった場合は締めすぎです。結び方については足の甲が痛い|靴をゆるめる前に見直したい結び方でもお伝えしています。
靴を選ぶときは、履いたときにかかとが安定して、ひもで足を留められるものを目安にしてください。高価な靴かどうかより、足に合って、靴の中で足が大きく動かないかどうかが大切です。
続けるために、翌朝の体を見る
翌朝、痛みの「種類」を分ける
走った翌朝は、体に聞いてみてください。
- 太ももやふくらはぎが張る感じ(筋肉痛):走り始めのころには出やすい反応です。強い痛みや腫れがなく、日常生活に支障がなければ、次の運動量を控えめにして様子をみます
- 膝の内側やかかとなど、特定の場所に出る痛み:走る量や走り方を見直すきっかけになります。次の回は走る量を減らすか、1回お休みしてください
全体が張る感じと、特定の場所の痛みは、分けて考えます。
軽い痛みなら様子見、こんな痛みは受診
一時的な軽い痛みで、休めば引いていくなら、しばらく様子を見て構いません。その間は走る量を減らすか、歩きに切り替えます。
一方で、腫れている、鋭い痛みがある、じっとしていても痛む。こうした場合は、無理に走らず医療機関に相談してください。
朝の一歩目にかかとや足の裏が痛む方は、朝の一歩目に足の裏が痛いもあわせてご覧ください。
毎日ではなく、間に休みの日をはさむ
走り始めのころは、走った日の次に休みを入れるくらいから始めても十分です。休みの日も、脚が慣れていくための大事な時間です。
続けるコツは、がんばる日を増やすことではなく、痛めずに次の回を迎えることです。
まとめ
ジョギングを始めるときに見直したいのは、次の3点です。
- 初日は、まだ走れるところでやめる——走れた日ほど、翌日に響くことがあります
- 足を前に投げ出さない——強いブレーキを減らします
- 走る前に靴ひもを結び直す——靴の中で足が大きく動かないように
ジョギングの始め方で大切なのは、どれだけ走れたかより、痛めずに次の回を迎えられたかです。
うまくいっているかどうかは、走った翌朝の膝とかかとで見てください。膝やかかとなど、特定の場所に痛みが残っていなければ、そのペースで続けてみる価値があります。
今日は、歩きから始めて、少し物足りないところで終わる。それで十分な1回目です。
セルフチェック
- ①ふだんほとんど運動していない
- ②初日から「走れるところまで」走った
- ③足を前に大きく投げ出して着地している
- ④靴の中で足が動く(かかとが安定しない、ひもがゆるい)
- ⑤走った翌朝、膝の内側やかかとが痛い
当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、先に見直す場所です。
- ①② → 痛めにくい走り始め方の①から。歩きと走りを混ぜて、物足りないところで終えてください
- ③ → 同じく②へ。足を前に投げ出さない、だけで十分です
- ④ → 同じく③へ。走る前に、かかとを合わせて結び直してください
- ⑤ → 翌朝の体を見るへ。痛みの種類を分けて、量を減らすか休んでください
全部やろうとしなくて大丈夫です。1つ選べば十分です。
やりがちなNG
- 初日に、走れるところまで走る
- 翌日に痛みがあるのに、同じ量を走る
- かかとで着かないようにと、急につま先だけで着地する
- ひもをゆるく結んだまま、靴を脱ぎ履きする
- 走り終わったら、歩かずにその場で止まる
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で様子を見ずに医療機関へ相談してください。
- 腫れている、熱っぽい
- 鋭い痛みがある、押すと一点が強く痛む
- じっとしていても痛む、夜も痛む
- 足をつくと痛くて、かばって歩いてしまう
- 休んでも痛みが引かない、または走るたびに強くなっている
- しびれや力の入りにくさがある
とくに、走る量が増えたあとに「押すと一点が強く痛む」場合は、様子を見ないでください。骨への負担が大きくなっている可能性もあります。早めに整形外科などの医療機関を受診してください。
また、走っている最中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまいが出たときは、すぐに中止して医療機関に相談してください。
よくある質問
Q1. 毎日走ったほうが、早く慣れますか?
走り始めのころは、間に休みの日をはさむほうがおすすめです。息が楽になるペースと、脚が慣れるペースは同じとは限りません。走った次の日に休みを入れるくらいから始めて、翌朝の体を見ながら少しずつ増やしてください。
Q2. 着地は、つま先側からにしたほうがいいですか?
無理につま先で着かなくて大丈夫です。走るときにかかとが先に接地すること自体が問題なのではありません。お伝えしたいのは、足を体の前に大きく投げ出して、強くブレーキをかけるような着き方を避けることです。急につま先側で着こうとすると、ふくらはぎやかかとの後ろに負担が移ることがあります。まずは足を前に投げ出さないことから試してください。
Q3. 走った直後は膝が少し痛いけれど、翌日は平気です。走ってもいいですか?
一時的な軽い痛みなら、様子を見て構いません。ただし、次の回は量を少し減らしてください。同じ場所が走るたびに痛む、痛みが強くなっていく場合は、医療機関で相談してください。