「体を動かしたほうがいい」とは分かっていても

運動不足が気になる。けれど、ジムに通う時間はない。ウォーキングは、天気や帰りの時間に左右される。

そんなときに思い出してほしいのが、ラジオ体操です。「ラジオ体操の効果なんて、たいしたことはないのでは」と感じる方もいると思います。

子どものころに覚えた、あの体操です。大人になった今だからこそ、見直したい良さがあります。

ラジオ体操は、3分ほどで全身を動かせる体操です

ラジオ体操第一は、伸びの運動から深呼吸まで、13の運動でできています(※1)。時間にして3分ほどです。

その短い時間のなかに、次のような動きが入っています。

  • 腕を上げる、回す
  • 体を横に曲げる、前後に曲げる、ねじる、回す
  • 脚を曲げ伸ばしする、跳ぶ

短い時間のなかに、体を動かす方向がひととおり入っている。

これが、ラジオ体操の大きな特徴です。

ラジオ体操第一は、厚生労働省の資料で4.0メッツとされています(※2)。メッツは運動の強さを示す目安で、やや速歩きに近い強さにあたります。

ただし、体操は3分ほどで終わります。これだけで1日に必要な運動量を満たせるわけではありません。

第一に慣れてきて、運動の強さを上げたい方には、ラジオ体操第二もおすすめです。同じ資料で、第二は4.5メッツと、第一より少し強い運動とされています。腰や膝が気になる方は、まず第一を無理なく続けられるようになってから試してください。

ラジオ体操の効果|柔道整復師から見た3つの良さ

① ふだん動かさない方向に、体を動かせる

座る、立つ、歩く。日常の動きは、前を向いたまま、似た向きでくり返されます。

腕を頭の上まで上げる。体を横に倒す。後ろに反らす。ねじる。こうした動きは、意識しないと少なくなりがちです。

ラジオ体操には、その動きがまとめて入っています。同じ姿勢が続いた体を、いろいろな方向に動かす機会になります。体の柔らかさや動かしやすさがどう変わるかは、動きの大きさや続け方、その方の状態によって違います。

厚生労働省の身体活動のガイドでも、高齢者向けの項目で、ラジオ体操は「多様な動きを行う運動」の例として挙げられています(※2)。

② 短くて、順番を覚えているから、始めやすい

  • 道具がいらない
  • 広い場所がいらない
  • 3分ほどで終わる
  • 音楽が流れれば、体が順番を思い出す

新しい運動を始めるときは、やり方を覚えるところでつまずく方もいます。ラジオ体操には、その手間がありません。

まずは、短い時間でも体を動かす機会をつくる。その入口として、始めやすい体操です。

③ 毎日同じ動きだから、体の変化に気づける

同じ順番で、同じ動きをくり返す。だからこそ、普段との違いに気づくきっかけになります。

  • 今日は、右の腕が上げにくい
  • 前に曲げると、いつもより腰のあたりが張る
  • 片足に体重をのせると、ふらつく

左右に差があること自体は、悪いことではありません。体の動かしやすさは、疲れや睡眠、その日の気分でも変わります。見てほしいのは「いつもと違う」という感覚です。

そんな変化があれば、無理に動かさず、その日は動きを小さくしてみてください。

ラジオ体操は、体を動かす時間であると同時に、普段との違いに気づくきっかけにもなります。

⚠️ ただし、動かしにくさだけで原因を判断することはできません。痛みが続く場合や、急な変化がある場合は、医療機関に相談してください。

良さを引き出す、動かし方のコツ

公式の解説には、それぞれの運動のコツが載っています。腕は大きく回す。伸びの運動では、腕をよく伸ばして背すじを伸ばす(※1)。

痛みのない方は、公式のコツのとおりに、大きく動かしてください。そのうえで、次の3つを意識してみてください。

  • 急がない——音楽についていけないときは、動きを小さくして構いません
  • 息を止めない——動きに合わせて、自然に呼吸を続けます
  • 終わったあとの体を確かめる——肩の上げやすさ、体の曲げやすさが、始める前とどう違うかを見ます

形をそろえることよりも、今日の体でどこまで動くかを感じ取ることを優先します。

腰や膝が気になる日の続け方

腰や膝に痛みや不安がある日は、13の運動をすべて同じ調子で行う必要はありません。

⚠️ 強い痛みや腫れがある場合、医療機関で運動を控えるよう言われている場合は、体操を始める前に、整形外科などの医療機関で相談してください。相談を急ぎたい症状は、受診の目安にまとめています。

弾みと勢いを減らす

体を前後に曲げる、ねじる、回す。こうした運動は、弾みや腕の勢いを小さくして、自分で止められる範囲で行います。

前に曲げるときは、手が床につかなくて構いません。後ろに反らすときは、両手を腰に当てて、小さく反らします。

跳ぶ運動は、無理に行わない

膝や足首、かかとのまわりに痛みがある日は、跳ぶ動きを無理に行う必要はありません。

痛みが出ない場合は、その場でゆっくり足踏みをする方法もあります。足踏みでも痛む場合は、その動きを休むか、座って行う方法を選んでください。

痛みが強い、腫れがある、歩くのが難しい場合は、体操よりも医療機関への相談を優先してください。

かかとのまわりの痛みについては、アキレス腱が痛いでくわしくお伝えしました。

座って行う

ラジオ体操第一には、座って行う「座位」のやり方も、公式に用意されています(※3)。立つとふらつく日や、膝や腰がつらい日は、座って行ってください。

椅子を使うときは、座面が安定していて、動いても滑らないものを選びます。

全部をやりきることを、目的にしない。

痛む動きは小さくするか、休む。それも、体操を続ける方法の1つです。

まとめ

ラジオ体操の効果を、3つの良さとしてお伝えしました。

  • ふだん動かさない方向に、体を動かせる——腕を上げる、横に曲げる、反らす、ねじる
  • 短くて、始めやすい——道具も場所もいらず、3分ほどで終わります
  • 体の変化に気づくきっかけになる——毎日同じ動きだから、普段との違いが分かりやすくなります

特別な運動を新しく始めなくても、覚えている体操で、体を動かす機会はつくれます。

明日の朝、音楽をかけて、1回だけやってみてください。終わったあとに、肩や腰がどう感じるかを確かめる。今日はそこまでで十分です。

セルフチェック

今の生活に、ラジオ体操を取り入れやすい場面があるか、振り返ってみましょう。

  • ①座っている時間が長く、同じ姿勢が続きやすい
  • ②腕を頭の上まで上げる動きを、ふだんほとんどしていない
  • ③運動を始めても、続かなかったことがある
  • ④自分の体の調子を、確かめる習慣がない

当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、ラジオ体操の良さを感じやすいところです。

  • ①② → 3つの良さの①へ。いろいろな方向に体を動かす機会になります
  • ③ → 同じく②へ。短く、覚えている体操から始められます
  • ④ → 同じく③へ。毎日同じ動きが、普段との違いに気づくきっかけになります

全部を意識しなくて大丈夫です。まずは1回、やってみるだけで十分です。

次の症状がある場合は、体操を始めるよりも、受診を優先してください。

  • 腰や膝の痛みが続いている、または腫れている
  • 脚にしびれがある、力が入りにくい

やりがちなNG

  • 痛みをこらえて、全部の運動をやりきる
  • 弾みをつけて、何度も深く曲げる
  • 息を止めたまま動かす
  • 痛みが出た動きを、翌日も同じ大きさで行う
  • 体操をしているから、ほかに体を動かさなくてよいと考える

受診の目安

次のいずれかに当てはまる場合は、体操をいったん休み、整形外科などの医療機関へ相談してください。

  • 強い痛みや腫れがある、歩くのが難しい——体操を中止して、早めに相談してください
  • 新しく出た力の入りにくさ、強くなっていくしびれがある——速やかに医療機関で確かめてもらってください
  • じっとしていても痛む、夜も痛む
  • 動きを小さくしても改善しない、または徐々に悪化している

体操中に胸の痛み、強い息苦しさ、気を失いそうな感じが出た場合は、すぐに中止してください。症状が強い、またはおさまらない場合は、救急車を呼ぶことも含めて、ためらわずに対応してください。

よくある質問

Q1. 毎日やったほうがいいですか?

毎日でなくて構いません。続けやすい回数から始めてください。時間帯も、朝に限りません。朝に行う方は、朝散歩で自律神経を整えるでお伝えした朝の過ごし方も参考になります。体操の翌日に関節のまわりの痛みが残るときは、1日あけるか、動きを小さくします。

Q2. ラジオ体操だけで、運動は足りますか?

体を動かすきっかけとしては十分ですが、時間は3分ほどです。これだけで運動量が足りる、とは言えません。歩く時間など、ほかに体を動かす機会とあわせて考えてください。歩き方については、ウォーキングの歩き方でお伝えしています。

Q3. 膝が痛いのですが、ラジオ体操をしてもいいですか?

強い痛みや腫れがある場合は、先に整形外科などの医療機関で相談してください。痛みが強くならない範囲で普段どおり動けるなら、跳ぶ運動は休む、痛みが出なければ足踏みに替える、座って行う、といった形で続けられます。

Q4. どのくらい続ければ、体が変わりますか?

期間は人によって違い、はっきりとは言えません。まずは体操の前後で、動かしやすさがどう変わるかを見てください。数字や期間よりも、痛みを増やさずに続けられているかどうかを目安にします。

出典・参考文献

※1 【図解】ラジオ体操第一・立位の順番とコツを解説|かんぽ生命保険

※2 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023|厚生労働省

※3 <図解>ラジオ体操第一・座位|かんぽ生命保険

✍️ この記事の執筆者

ふみや|柔道整復師

整形外科クリニックのリハビリ室での臨床経験あり。30代以降の体の不調と向き合ってきた立場から、痛み・こり・姿勢・運動のセルフケアを「やさしく、でも本質を外さず」をモットーに発信しています。

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