夕方になると、腰が重くなる
立ち仕事で腰が痛い。朝はそれほどでもないのに、夕方が近づくと腰が重くなってくる。
- レジや受付で、ほとんど同じ場所に立っている
- 調理や洗い物で、少し前かがみのまま手を動かしている
- 接客中は、背すじを伸ばしていようと気をつけている
腰が痛くなってくると、「姿勢が悪いのかもしれない」と、胸を張って立ち直す方もいるかもしれません。それでも、しばらくするとまた重くなる。
立つ時間そのものは、仕事ですから簡単には減らせません。それでも、立っている間の過ごし方には、変えられるところがあります。
良い姿勢を保つより、同じ姿勢を続けない
腰痛の背景はさまざまです。腰そのものの病気だけでなく、血管や内臓の病気、ストレスなどが関わることもあります(※1)。立ち仕事をしているからといって、腰の痛みの原因が立ち方にあるとは限りません。
この記事で扱うのは、原因を自分で見分けることではなく、立ち仕事の中で腰への負担を減らす工夫です。
厚生労働省が職場の腰痛予防についてまとめた資料でも、立ち作業では、体を動かしにくい状態で立ち続けることや、前かがみ、反り返りに近い姿勢が、腰に負担をかける場合があるとされています(※2)。そのうえで、立っているときも座っているときも、同じ姿勢を長く続けないことが挙げられています。
背すじを伸ばすこと自体が悪いわけではありません。ただ、「良い姿勢」を決めて、そのまま動かずにいようと頑張ると、かえって同じ姿勢が長くなることがあります。
良い姿勢を保つより、同じ姿勢を続けない。
⚠️ 急に強い痛みが出て動けない、脚にしびれがある、力が入りにくいといった場合は、立ち方を工夫する前に受診の目安をご覧ください。
立ち仕事で腰が痛いときに重なりやすい3つのこと
どれも痛みの原因と決まるものではありません。自分の仕事で当てはまるところがないか、振り返ってみてください。
① 同じ場所で、同じ立ち方が続いている
レジの前、受付、製造ラインの持ち場。その場からあまり動かない仕事では、立ち方を変えるきっかけが少なくなります。
一見、動きが少なくて楽に見える仕事でも、同じ姿勢が続くことで負担を感じることがあります。
② 作業の高さが合わず、前かがみや反り返りが続いている
作業台が低いと、前かがみが続きやすくなります。高い棚や機器の操作が続くと、腰を反らせた姿勢になることもあります。
同じ作業台でも、身長や腕の長さによって、合う・合わないが分かれます。
腰を反らせて立つ癖が気になる方は、反り腰についての記事もあわせてご覧ください。
③ 足もとが硬い、冷える
コンクリートなどの硬い床で立ち続ける。冬の厨房や倉庫で、足もとが冷える。
硬い床や寒い環境は、立ち仕事の負担を感じやすくする要素の1つです。靴やマット、足もとの防寒など、調整できることがないか確かめてみましょう。
腰の負担を減らす立ち方の工夫
① 台に片足を乗せて、左右を替える
立ち作業で両脚をあまり使わない場合は、作業の内容や位置に応じた高さの片足置き台を使う方法があります。左右の足を交互に乗せて、姿勢に変化をつけることも紹介されています(※2)。
- 台は、作業に合った高さで、滑りにくく、ぐらつかないものを選ぶ(高すぎる台や不安定な台は、姿勢を崩したり転倒につながったりすることがあります)
- 通路や足もとの邪魔にならない場所に置き、つまずかないようにする
- 片足を乗せたままにせず、ときどき左右を替える
台を置けない場所では、足の位置を少し前後に変えるだけでも構いません。乗せたときに腰の痛みが強くなるなら、やめて別の方法を試してください。
② 体重をかける足を、ときどき替える
片足に体重をかけて立つこと自体が、悪いわけではありません。その立ち方が楽なこともあります。
気をつけたいのは、いつも同じ側で、同じ立ち方を長く続けることです。ときどき反対の足に体重を移したり、足の位置を変えたりしてみてください。
膝を後ろに押し込むように伸ばして立つ癖がある方は、膝を軽くゆるめて立つなど、立ち方に変化をつけてみましょう。膝を常に曲げておく必要はありません。膝のロックについては、膝の裏が痛いでくわしくお伝えしています。
③ 体ごと近づいて、作業の高さを変える
腕だけを遠くへ伸ばすと、前かがみになりやすくなります。
- 作業する物の正面に立ち、一歩近づいてから手を動かす
- まな板などの高さを、滑らない台を敷いて変えられないか考える
- 作業台が高くて腕や肩が上がるときは、滑りにくい足台が使えないか確かめる
目安の1つは、肘を軽く曲げて無理なく手を動かせる高さです。ただし、作業の内容や道具によって適した高さは変わるため、前かがみや肩の力みが続かない位置を探してみてください。
仕事の流れの中でできる3つのこと
① 座る、もたれる時間を少しつくる
座ってできる作業を一部組み合わせられると、立ち続ける時間を区切りやすくなります。途中で腰かけて休める椅子や、座面の高い椅子が使える場合も同じです。
すぐに椅子を用意できなくても、手が空いた合間に壁や台へ軽くもたれる、休憩時間には座る。そうした形でも、同じ立ち方の時間を区切れます。
② 区切りのよいところで、脚を軽く動かす
立ち作業の小休止は、おおむね1時間に1、2回とり、脚の曲げ伸ばしなどを行うことが望ましいとされています(※2)。職場向けの目安ですので、仕事の流れに合わせて考えてください。
接客や持ち場の都合で離れられないときは、お客様が途切れたときや作業の区切りに、その場で足踏みをする、膝を軽く曲げ伸ばしする。
短い区切りでも、同じ姿勢は変えられます。
痛みが強くなる動きは、無理に続けないでください。
③ 足もとを整え、職場にも相談する
- 靴は、足に合っていて、靴の中で足が大きく動かないものを選ぶ
- 硬い床では、クッション性のある靴やマットが使えないか確かめる
- 冷える場所では、靴下や履物で足もとの冷えを防ぐ
足台やマット、椅子、座ってできる作業との組み合わせは、自分だけでは決められないこともあります。先ほど紹介した厚生労働省の資料も、職場で取り組む対策をまとめたものです。腰がつらいことを1人で抱え込まず、職場で相談してみるのも1つの方法です。
足のむくみやだるさも気になる方は、立ち仕事の足のむくみもご覧ください。
まとめ
立ち仕事で腰が痛いときに見直したいのは、次の3点です。
- 同じ姿勢を長く続けない——足を乗せ替える、体重を移す
- 前かがみや反り返りが続く高さを変える——体ごと近づく、台を使う
- 休む区切りと足もとを整える——座る、もたれる、靴やマットを見直す
立ち方の工夫は、原因を見分けるものでも、痛みをなくすことを約束するものでもありません。痛みが続くときは、医療機関で確かめてもらいましょう。
明日の仕事では、まず体重をかけている足に気づいて、一度だけ反対の足に移してみてください。それで十分な一歩です。
セルフチェック
まずは、普段の仕事を振り返ってみましょう。
- ①同じ場所で、同じ立ち方のまま長く働いている
- ②いつも同じ足に体重をかけている
- ③作業中、前かがみや腰を反らせた姿勢が続いている
- ④硬い床で立ち続けている、足もとが冷える
- ⑤休憩時間にも座らず、立ったままでいることが多い
当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、そのまま先に見直す場所です。
- ① → 腰の負担を減らす立ち方の工夫の①へ。台に片足を乗せて、左右を替えます
- ② → 同じく②へ。ときどき反対の足に体重を移します
- ③ → 同じく③へ。体ごと近づいて、作業の高さを見直します
- ④ → 仕事の流れの中でできることの③へ。靴やマット、冷え対策を確かめます
- ⑤ → 同じく①へ。座る、もたれる時間を少しつくります
全部やろうとしなくて大丈夫です。1つ選べば十分です。
次の症状がある場合は、立ち方の見直しよりも受診を優先してください。
- 急に強い痛みが出て、動くのが難しい
- 脚にしびれがある、力が入りにくい
※ 新たな排尿・排便の異常や、股のまわりの感覚の異常がある場合は、すぐに救急の医療機関へ相談してください。くわしくは受診の目安をご覧ください。
やりがちなNG
- 「姿勢が悪いから」と、胸を張った姿勢のまま動かずに立ち続ける
- 片足を台に乗せたまま、同じ側だけで立ち続ける
- 高すぎる台や不安定な台、つまずきやすい場所に置いた台を使う
- 痛みをこらえて、休憩でも座らずに働き続ける
- しびれがあるのに、様子を見続ける
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で様子を見ずに、整形外科などの医療機関へ相談してください。
- 脚にしびれがある、力が入りにくい——新しく出た場合や、強くなっていく場合は早めに
- 立ち続けたり歩いたりすると脚に痛みやしびれが出て、休むと楽になることをくり返す
- 安静にしていても痛みが続く、夜間も痛みで目が覚める、または痛みが徐々に悪化している(※1)
- 発熱や悪寒など、全身の体調不良を伴う
- 転んだ、ぶつけた、重い物を持ったなど、きっかけのあとから強く痛む
腰の痛みに加えて、新たな排尿・排便の異常(尿が出にくい、もれるなど)、股のまわりの感覚の異常、両脚のしびれや力の入りにくさが出た場合は、緊急性の高い病気の可能性があります。症状がそろうのを待たず、すぐに救急の医療機関へ相談してください。
急に強い痛みが出たときの過ごし方は、ぎっくり腰の対処法にまとめています。
よくある質問
Q1. お尻や体幹の筋トレをすれば、よくなりますか?
筋トレだけで解決するとは限りません。腰の支えを高める運動が役立つこともありますが、合う運動は状態によって違います。痛みが強い時期は無理に始めず、まずは立ち方や作業環境を見直し、運動については医療機関で相談してください。
Q2. 腰痛ベルトは使ったほうがいいですか?
合う人もいますが、全員に同じようにすすめられるものではありません。腰部保護ベルトは一律に使うのではなく、一人ひとり効果を確かめて判断するものとされています(※2)。つけると痛みが強くなる、苦しいといった場合は使い方を見直し、迷うときは医療機関で相談してください。医療機関で着用を指示されている場合は、その指示に沿ってください。
Q3. インソールや靴を替えれば、腰の痛みはなくなりますか?
楽に感じる方もいますが、それだけで痛みがなくなるとは限りません。靴やインソールは、足もとの環境を整える方法の1つです。足に合わない靴を見直しても腰の痛みが続くときは、医療機関で相談しましょう。
Q4. 休みの日は、なるべく動かないほうがいいですか?
痛みが強くならない範囲で普段どおり動けるなら、一日中じっとしている必要はありません。ただし、痛みを我慢して動く必要はありません。痛みが強い場合や、だんだん悪化している場合は、医療機関で相談してください。
出典・参考文献
※1 腰痛|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる(2026年11月2日閲覧)
※2 職場における腰痛予防対策指針(別紙「立ち作業」・解説)|厚生労働省(2026年11月2日閲覧)