手足を伸ばしただけなのに、なぜかグラグラする
四つ這いになって、右手と左脚を同時に伸ばす。バードドッグのやり方を調べると、たいていこう書いてあります。動き自体は単純です。
ところが実際にやってみると、体がぐらついて、腰が落ちたり反ったりする。しかも「これ、どこに効いているんだろう」という手応えのなさが残る——そんな経験はありませんか。
そのまま「自分には合わない運動だ」と離れてしまう方は少なくありません。
ですが、つまずいている場所はたいてい同じところです。
多くの方が伸ばす側ばかり見ていて、床についている側を見ていません。
伸ばす側と同じくらい、支えている側が大事です
バードドッグは、見た目には「手足を伸ばす運動」です。ですが実際には、手足を伸ばすことと同じくらい、体を支えている側のコントロールが大事になります。
理由はシンプルです。対角の手足を持ち上げると、床についている点が4点から2点に減ります。支えが減れば、体はねじれたり傾いたりしやすくなります。
つまり、こういうことです。
手足を伸ばすことで、体はわざと崩れやすくなります。その崩れを抑えながら動くことが、バードドッグの中身です。
だから、手足を高く上げることが、そのまま運動の質につながるわけではありません。むしろ崩れが大きくなって、腰の反りでごまかすことになりがちです。
お腹や背中まわりで体を支える働きが必要になる姿勢ですが、どこで感じるかには個人差があります。「ここに効いていないとおかしい」と考えなくて大丈夫です。
整形外科クリニックの現場でよく見かけるのは、伸ばした手足の高さばかり気にして、床についている手に体重を乗せられていない方です。ご本人は上げることに集中しているので、気づいていません。
この「支えている側を見る」という考え方は、片足立ちがグラつく理由でお伝えした内容と同じ軸です。立っていても四つ這いでも、支えている側から見ていくという点は変わりません。
バードドッグでやりがちな3つの間違い
① 手足を高く上げすぎている
いちばん多いのがこれです。高く上げるほど効きそうに見えますが、上げた分だけ腰が反ってしまう方が多くいます。
目安は、手足が床と平行になるくらいまで。ただし、無理に平行まで上げる必要はありません。肩や股関節の動く範囲は人によって違いますし、この運動は「水平にすること」が目的ではないからです。
高さではなく、腰や骨盤を保てる範囲が基準になります。腰が反ってくる手前で止めれば十分です。
ここで、意識を1つ変えるだけで変わることがあります。「上げる」ではなく「遠くへ伸ばす」と考えてみてください。
脚を上げようとすると、持ち上げる意識が働いて腰が反りやすくなります。かかとを後ろの壁に向かって押し出すように、長く伸ばすイメージに変えると、腰を反らさずに脚が上がってくる方が多いです。
手も同じです。上げるのではなく、指先を前の壁に向かって長く伸ばすと考えると、肩がすくみにくくなります。
② 支えている側に体重が乗っていない
ここが本題です。確かめてほしいのは2つあります。
床についている手に、体重を乗せられているか。 指で床を握り込んで支えようとせず、手のひらの付け根から指の付け根まで、床を押すようにします。手で床を押すことで、肩まわりまで含めて上半身が安定しやすくなります。
床についている膝の位置が動いていないか。 伸ばすたびに膝が大きく動くなら、骨盤や体を安定させる力が足りていない可能性があります。
手の使い方は、片足立ちの記事や足の親指の付け根が痛いでお伝えした「指で握り込まない」という話と共通します。
③ 息を止めて力んでいる
グラつきをこらえようとして、呼吸まで止まっていませんか。
息を止めないと姿勢を保てないなら、今の段階では少し難しすぎるサインです。上げる高さを下げるか、次に紹介する段階の練習に戻してください。
なお、息を止めたまま力むと血圧が一時的に上がることがあります。血圧が高いと言われている方は、とくに息を止めないことを優先してください。
支えている側から作る手順
① 土台を作る
四つ這いになります。手は肩の真下、膝は股関節の真下。背中は反らせも丸めもせず、自然な状態で構いません。
ここで先に、手と膝で軽く床を押します。手のひらの一部分だけに体重が集まっていないかを確かめてください。手足を上げる前に、この「押している感じ」を作っておくのがポイントです。土台を作ってから動かす、という順番です。
② 段階を踏んで進める
いきなり対角でやる必要はありません。次の順番で進めると、つまずきにくくなります。
- 片脚だけを伸ばす
- 片手だけを伸ばす
- 手を前へ、脚を後ろへ「滑らせる」(床から浮かせず、床に触れたまま伸ばす)
- 対角で浮かせる
3つ目の「滑らせる」を挟むと、いきなり浮かせるより崩れにくくなります。片脚だけでも骨盤が傾くなら、そこが今の段階です。焦らなくて大丈夫です。
③ 対角で伸ばし、ゆっくり戻す
右手と左脚(またはその逆)を伸ばし、3〜5秒キープします。
そして見落とされがちなのが戻り方です。ストンと落とさず、支えている側で床を押したまま、ゆっくり四つ這いに戻します。ここまでを1回と考えてください。
戻すときにも、体を支える働きは必要です。伸ばして止めるところだけが運動ではありません。
左右3〜5回ずつから。回数より、崩れずにできた回数を数えるほうが役に立ちます。
感じ方について
お腹の奥や背中に軽く力が入る感じが出る方が多いですが、お尻や太もも裏で感じる方もいます。また、何も感じなくても間違いとは限りません。
感覚がつかみにくいときは、感覚を探すより目で確かめるほうが確実です(次の習慣②を参照)。
続けるための3つの習慣
① 回数ではなく「崩れない範囲」で決める
10回やることを目標にすると、後半は崩れたまま数を数えることになります。崩れた時点でその日は終わり、と決めておくほうが、結果的に中身が濃くなります。
3回で崩れるなら、今日は3回で十分です。
② スマホで横から1回だけ撮る
骨盤が傾いているかどうかは、自分では分かりにくいものです。 鏡は正面しか映らないので、横から見るのが確実です。
スマホを床に置いて、横から1回だけ動画を撮ってみてください。腰が反っていないか、支えている側の手に体重が乗っているか、10秒見れば分かります。
③ 痛みが出る日はやらない
腰やお腹に力を入れる運動なので、痛みがある日に無理をする必要はありません。
とくに急に腰を痛めた直後は、この運動の出番ではありません。ぎっくり腰の対処法でお伝えしたとおり、その時期にやることは別にあります。痛みが落ち着いて、日常動作が戻ってきてからで十分です。
体幹の運動そのものが初めての方は、プランクが続かないあなたへもあわせてご覧ください。
まとめ
バードドッグのやり方で押さえたいのは、次の3点です。
- 高く上げない——基準は高さではなく、腰や骨盤を保てる範囲
- 支えている側に体重を乗せる——手のひらで床を押せているか、膝がずれていないか
- ゆっくり戻すまでが1回——戻すときにも支える働きは必要
バードドッグは、手足を高く上げる運動ではありません。手足を動かしながら、体幹を崩さずに支える運動です。
今日は左右3回でも構いません。崩れずにできた3回なら、それで十分です。
セルフチェック
- 手足を伸ばすと、腰が反ったり落ちたりする
- 伸ばすたびに、床についている膝が大きく動く
- 床についている手が、指先だけになっている
- 伸ばしている間、息が止まっている
- 片脚だけでも骨盤が傾く
当てはまる数が多いほど悪い、という表ではありません。当てはまった項目が、そのまま戻る段階の目印です。支えている側から作る手順の段階を1つ戻して、そこからやり直してみてください。崩れずにできる範囲まで戻すのが近道です。
やりがちなNG
- 崩れているのに、決めた回数まで続ける
- 伸ばした手足をストンと落として終わる
- できないうちから、いきなり対角で浮かせようとする
- 腰に痛みが出ているのに、我慢して続ける
- 自分の姿勢を一度も確かめないまま続ける
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、自己流で続ける前に医療機関へ相談してください。
- 四つ這いになるだけで、腰や首に強い痛みが出る
- 新しく出てきた排尿・排便のしにくさ、股のまわりの感覚の異常、両脚のしびれや力の入りにくさがある
- 片脚や片腕に、はっきりした力の入りにくさがある
- 手首や膝の痛みで、四つ這いの姿勢が取れない
- 急に腰を痛めた直後で、日常動作もつらい
とくに2つ目——排尿・排便の変化と、股のまわりの感覚や両脚の症状が重なる場合は、様子を見ないでください。 早めに医療機関を受診してください。
なお、妊娠中や産後は、時期や体調によって適した運動量や姿勢が変わります。不安がある場合は、主治医や専門家に相談してから始めてください。
よくある質問
Q1. 何回やればいいですか?
回数の正解はありません。 左右3〜5回から始めて、崩れずにできる範囲で構いません。10回できても後半が崩れているなら、3回のほうが中身があります。
Q2. プランクとどちらが良いですか?
どちらが上ということはありません。 目的が少し違います。プランクは姿勢を止めたまま保つ運動、バードドッグは動かしながら崩れないようにする運動です。
負荷のかかり方が違うので、プランクでつらさがある方でも、バードドッグなら取り組みやすい場合があります。逆のこともあります。実際に試して、痛みが出ないほうから始めてください。
Q3. 手首が痛いときはどうすればいいですか?
手のひらをつく姿勢が合わない方もいます。タオルを畳んで手首の下に敷く、握りこぶしを作って支えるといった方法で楽になることがあります。それでも痛むなら、無理に続けず、整形外科などの医療機関で一度確認してもらってください。
Q4. 腰痛があるのですが、やって良いですか?
痛みの程度と時期によります。 急に痛めた直後は、この運動の出番ではありません。慢性的な腰の重さがある方は、痛みが出ない範囲で試してみて、やると痛みが増えるなら中止してください。判断に迷うときは、医療機関で相談してから始めるほうが安心です。
Q5. 毎日やらないと意味がないですか?
毎日である必要はありません。続かない量を設定するほうが遠回りです。週2〜3回、左右3回ずつからでも構いません。お尻がうまく使えている感覚がつかめない方は、ヒップリフトが効かないあなたへもあわせてご覧ください。